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角田裕毅ファステストラップを狙った1周かぎりのチャンス「心臓が止まるかと」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

【チェッカーを受けた直後の角田は冷静だった】

「最終ラップのアタックというのは初めての経験でしたけど、すごく楽しかったですね。長い間タイヤマネジメントをしてきて、最後に予選モード(の走り)に切り替えるというのは、ちょっとスリリングでした。

 ここはフィジカル的にもきついサーキットなので、ラクではありませんでしたけど、集中し直して臨みました。最後に最大限のダウンフォースを使って、軽いタンクでアタックするのは楽しかったですし、僕としては100パーセント出しきりました」

 実は、このファステストラップ狙いのピットインができる状況になったのは、たった1周前のことだった。

 54周目にピットインしなければ最終ラップのアタックに間に合わないという状況下で、後方のアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)とのギャップが20秒を超えたのは53周目。まさにギリギリのタイミングだった。

 ここに至るまで、角田はランス・ストロール(アストンマーティン)に抜かれて入賞圏外に落ちてからも、あきらめずプッシュし続けていた。自己ベスト連発の走りを続けたことが、このピットストップを可能にするギャップを生み出したのだ。

 金曜に行なわれた予選で11番グリッドを獲得したこと。そして決勝でもスタートを決めてポジションを守り、ミディアムタイヤで好ペースを刻んだこと。

 第2スティントに選んだハードタイヤではペースがやや苦しく、ピットレーンスタートのアストンマーティン勢にギャップを縮められてしまった。そしてフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)のアンダーカットを阻止するために早めのピットストップを敢行したことで、第3スティントはストロールより6周、アロンソより8周古いタイヤでの戦いを強いられ、そのペース差で易々と抜かれてしまった。

 アロンソがフロアにダメージを負ってリタイアしたことで角田は再び10位を取り戻したが、久々の入賞とファステストラップ記録の興奮に沸くピットとは対照的に、チェッカーを受けた直後の角田は冷静だった。

「今日はラッキーだった。でも、僕らにはもっとペースが必要だ。十分じゃない」

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