ホンダのモンスターマシンを操った悲運の天才。ダニ・ペドロサの功績 (6ページ目)
しみじみとした口調でそう話す青山は、寂しい気持ちと祝福したい気持ちが相半ばする正直な心情を述べた。
「自分の好きなスポーツを辞める判断はすごく大変なことだし、それだけに決断までに時間もかかったと思う。こうやって引退会見をして辞めることができる選手はほとんどいないので、プロフェッショナルライダーとしてすばらしい終わり方だと思います」
そして、こう付け加えた。
「あの小柄な体格でモンスターマシンを扱うのは、みなが思っている以上に大変なことなんです。マルク(・マルケス)はもちろんすごいライダーだけど、ライダーとしてのセンスは、僕はダニのほうが上だと思っています」
結局、この現役最終シーズンのみ、ペドロサは一度も表彰台を獲得できなかった。そして、引退の翌年から、KTMのテストライダーに就任した。今シーズンのKTMの躍進を考えるとき、19年から陣営へ加わったペドロサの貢献も大きく下支えしているであろうことは、想像に難くない。
最近のペドロサは、額の左上部あたりの前髪に、少し白いものが混じりはじめたようにも見える。それを染めて隠したり取り繕ったりしていないところが、いかにも彼らしい。
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