もっとコース上での追い抜きを! F1新レギュレーションを巡る駆け引き (3ページ目)
ただし、これらの諸策に対し、とくに空力関連のレギュレーションが厳しくなるため、どのマシンも似たような形状になってしまうと批判する声も上がっている。実際のところ、各マシンは似たような外観になるどころか、多くのパーツは共通化され、ホイールやブレーキ、タイヤ、燃料系、ステアリングコラム、そしてラジエーターもまた、全マシンで同じものの使用を義務付けられる可能性がある。車体形状の大部分が厳しく管理されるため、この新規定が導入されれば、チームが創意工夫を凝らす余地は非常に小さくなるだろう。
また、制約は技術開発だけでなく、予算面にも及ぶ。F1が現在検討している改革案では、1チームにつき1シーズンあたり1億7500万ドル(約186億円)の上限が設けられるという。ただし、この金額にドライバーへの報酬額は含まれない。レッドブルやメルセデスにとっては大幅なコストカットになるだろうが、ウィリアムズやレーシングポイントのようなチームにはさほど大きな影響にはならないだろう。
2021年改革案で大きな影響を受けるのは車体だけではなく、パワーユニットについても同様だ。ざっくりと言えば、電動モーターを今より少しパワフルなものとし、内燃機関(いわゆるエンジン)については、最高回転数のリミットを若干高める方向になると思われる。ちなみに、パワーユニットに関しては2025年にまったく新しいものへ取り替えられるという。内燃機関の排気量をさらに小さくし(おそらく850cc)、よりパワフルなモーターを組み合わせた、ハイブリッドシステムになる見込みだ。
これらの諸変更で、マシン間、チーム間の戦闘力の差は大幅に縮小し、コース上では常に激しい競り合いが繰り広げられていくだろう。それは、メルセデスやレッドブル、フェラーリの優勢が続いた近年の状況を終わらせる......というのが、F1GPのオーガナイザーが描く「今よりも魅力的なF1」の未来像であり、現在、議論が進む改革案は、それを実現するための新レギュレーションの方向性なのだ。仮にそれが実現すれば、F1の歴史のなかで何度も繰り返されてきたルール変更のなかでも、最大の変革になりそうだ。
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