ロアッソ熊本・巻誠一郎が古巣・千葉に送った「感謝のメッセージ」

  • 松本陸樹●取材・文 text by Matsumoto Rikuki  photo by AFLO

 身体を投げ打つように空中戦に挑み、何度も地面に叩きつけられる。泥臭いまでの献身と、恐れを知らないボールへの執着心は、35歳となった今なお健在だった。

 1ヶ月ぶりにJリーグのピッチに立った巻誠一郎 1ヶ月ぶりにJリーグのピッチに立った巻誠一郎 平成28年熊本地震の影響により活動を中止していたロアッソ熊本が、5月15日、およそ1ヶ月ぶりにJリーグの舞台へと戻ってきた。対戦相手は、ジェフユナイテッド千葉。巻誠一郎にとっては、長年在籍した古巣との対戦である。

 未曾有の大災害に見舞われた熊本は、今なお我々の想像には及ばない困難の真っただ中にある。日常の生活もままならず、1万人を超える人たちが避難所生活を強いられるなど、復興への光は遠くにかすんだままだ。

 そんな状況下で、ロアッソも苦しい日々を過ごしていた。本震が起きた4月16日以降、彼らにとっては、「サッカーどころではない」状況だったかもしれない。練習することなど当然できず、県外に避難する選手もいた。それでも地元のために何かできないかと、避難所を回り、物資を届け、子どもたちとボールを蹴り合い、復興のための支援に力を注いだ。

 5月2日、なんとか全体練習を再開。8日に震災後初の対外試合をこなしたものの、ブランクを埋めるには、あまりにも時間が足りなかった。その影響は千葉との再開戦で、如実に表れた。

 立ち上がりからエンジン全開で攻撃を牽引した清武功暉は、60分過ぎあたりから足に違和感を覚え、終盤は走ることさえままならなくなっていた。

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