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ロアッソ熊本・巻誠一郎が
古巣・千葉に送った「感謝のメッセージ」 (3ページ目)

  • 松本陸樹●取材・文 text by Matsumoto Rikuki  photo by AFLO

 今季2度目の先発となった巻は、84分に交代するまで、まさに死に物狂いでピッチを駆け巡った。果敢に空中戦に挑み、前からチェイスを続け、相手DFと接触して顔を強打しても、なお走ることをやめなかった。

「チームとして90分プレーしたのは、1ヶ月以上前のこと。そういうなかで、特に後半は苦しくて、何度も足が止まりそうになったし、何度もあきらめそうになったし、本当に何度もゴールに向かうのをやめようかと思いました」

 隠すことなく、熊本の大黒柱は自らの弱さをさらけ出した。「......だけど」と、巻は続ける。

「そういうなかで、僕も含めて選手みんなの頭に浮かんだのは、家がなくなったり、いまだに苦しい思いをしている熊本の方々の顔や想い。それに比べたら、僕らのきつさなんて小さなこと。そういう想いが、僕らの足を最後まで動かしてくれた」

 震災後に巻が起こした行動は、大きな称賛を浴びた。復興支援サイトを立ち上げ、物資を募り、苦しむ熊本の人たちの大きな支えとなった。サッカー選手という枠を超えた、巻の人間性が改めて浮かび上がった出来事だ。

 そんな巻にとって、再開初戦の相手が千葉であったことはちょっとした運命だっただろう。7年半在籍した自身の原点の地を去り、ロシアのクラブに移籍したのは、2010年夏のこと。前年にJ2に降格した愛するクラブをふたたびJ1に戻すために必死に戦い続けた巻だったが、その想いとは裏腹に、このシーズンは出場機会が減少。事実上の戦力外だった。

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