奇跡呼ぶ渋野日向子。鈴木愛と
追いつ追われつドラマのような「名勝負」 (3ページ目)
「(第2打は)ピンまで217ヤード。刻むって選択肢は、まったく考えていなかった。パー5、しかも2オンできる。5番ウッドでも(グリーンに)届く距離を刻むという選択肢は、私にはないんで」
試合後、レイアップしなかった理由を尋ねられた渋野は、語気を強めるようにそう言った。
「2オンさせて、バーディーを取ることしか考えていなかった。そのことだけに集中していました」
ただ、渋野が打ったボールは、左の池のほうに向かっていった。「危ない!」――誰もがそう思って、口をあんぐり開けていたが、池の水面は動かなかった。
「そんなに高い球は上がらないから、風の抵抗は受けないだろうと思って5番ウッドにしたんですが......。力んじゃって、ドッキリでしたよね(笑)」と渋野。ボールは、池の手前のラフに堪えるように止まっていた。やはりツキがある。
渋野はパー。ボギーとした鈴木との差を、最終18番(パー4)を残して2打差に広げた。熱戦に終止符が打たれたかのように見えた。
ところが、ティーショットを打ち終え、2人がセカンド地点に到達すると異変が起きた。突然、コース内に信じられないほどの暴風が吹き荒れたのだ。風雲急を告げるのか。
予断を許さない状況のなか、先に打った鈴木はピン横2mにつけるナイスショットを披露。観衆を沸かせる。片や、強烈なフォロー風が吹くなか、残り134ヤードを「2番手下げてピッチングで打った」という渋野の第2打は、ピン手前6mにショートした。
渋野のバーディーパット。打った瞬間、ギャラリーの何人かは「短い!」と呟いた。しかしその時、ボールは強烈な追い風に押されるようにしてトロトロと前進。カップまで約60cmのところに止まった。
その後、鈴木がバーディーパットを沈めて通算18アンダーでホールアウト。観衆から万雷の拍手を受ける。
そして、渋野。さすがに、事実上のウイニングパットは外さなかった。"名勝負"にピリオドが打たれた。
もし17番でこの暴風に見舞われていたら、結果はどうだっただろうか。重ね重ね、渋野にツキがあったことはたしかだ。
鈴木は試合後、「15番のバーディーパットが入らなかった。これが、すべてです」と敗戦の弁を述べた。
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