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ワールドカップ抽選会に世界中からブーイング トランプ陣営の集会と化したイベントの舞台裏 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【トランプをよいしょする理由】

 それが最高潮に達したのはFIFA平和賞の授与。ノーベル平和賞を逃したトランプのために、FIFAは新たに平和賞をわざわざ創設して贈った。賞の授与の前には、トランプを称賛する4分間のビデオが流れ「大統領は任期中、世界で平和を追求している」とのナレーション。トランプが国内のソマリア系移民を「ゴミ」と呼び、国内外で抗議が巻き起こったたった数日後の出来事だ。

 この賞は何を基準に選ぶのかも、誰が選んだのかも、他にどんな候補がいたのかも、いっさい明らかにされていない。もしFIFAが平和賞を作るなら、サッカーを通じて平和に貢献した者を表彰すべきだろう。トランプとサッカーは何の関係もない。トランプが自分で自分にメダルをかけるシーンでは、会場中にしらけた空気が流れていた。

『ワシントン・ポスト』は「この賞のおかげでトランプの来年のノーベル平和賞もなくなった」と報じている

 これほどインファンティーノがトランプをよいしょするのは、「史上最大」を謳う来年のワールドカップの成功が彼にかかっているからだ。

 たとえばトランプは現在、約12カ国の国民の入国を制限している。そこにはワールドカップに出場するハイチやイランも含まれている。今回の抽選会にはハイチ、イランの各4名だけに特別入国ビザが出されたが、このようにトランプは処置を緩めることもできれば、厳しくすることもできる。出場国のサポーターの観戦を可能にするのも不可能にするのも彼の胸先三寸だ。

 こうして組み合わせ抽選会はトランプ陣営の集会と化したのだ。

 このイベントにおいてインファンティーノはまさにピエロだった。トランプの顔色をうかがい、拍手を送り、舞台上で自画撮りをする。ジャケットからシャツの袖が長く飛び出した最悪な着こなしも(なぜ誰も注意しなかったのだろう)、よりピエロ感を強調していた。

 今回のワールドカップはアメリカ大会ではない。アメリカ・カナダ・メキシコの3カ国の共催だ。開幕メキシコ、決勝はアメリカ。ならば組み合わせ抽選会くらいカナダでやるべきだったのではないか。カナダの人々は自分たちが無視されていると感じている。

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