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ワールドカップ抽選会に世界中からブーイング トランプ陣営の集会と化したイベントの舞台裏 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【各国のサッカー関係者も辟易していたが...】

 そもそもワールドカップの試合が行なわれないワシントンで抽選会が行なわれたのは、トランプの都合である。会場のケネディ・センターはホワイトハウスの目と鼻の先。トランプが多忙でホワイトハウスから離れられないと言ったため、抽選会がわざわざトランプのところまで出向いたのである。

 ワシントンではつい先日、テロ事件が起こったばかりである。ホワイトハウスの前でふたりの州兵が銃撃された。今回の抽選会はその襲撃があってから初めてのワシントンでの公開イベントだった。当然、セキュリティーはものすごく厳しかった。ブラジルの『ESPN』や『UOL』の記者によると、会場付近は交通規制が敷かれたうえに、入場するには厳重な手荷物検査が行なわれた。窓口はひとつしかなく、世界各国から来た百人規模のメディアはカメラ機材やPCを抱えたまま、2時間以上、大雪の降る外で待たされたという。

 報道陣のなかにはアルゼンチンの『ディレクTV』のコメンテーターを務める元アルゼンチン代表GKセルヒオ・ゴイコエチェアもいた。90年ワールドカップ準決勝でイタリアのPKを止め、ディエゴ・マラドーナとその仲間たちを決勝に導いた立役者だ。彼も「もし今日が試合だったら、手がかじかんでPKも止められなかっただろう」と言っていた。

 こうしたビジネス化、政治化した抽選会には各国のサッカー協会の幹部たちも辟易していた。だが、FIFAが儲けた富が自分たちにも流れ込み続けるなか、声を上げる者はほとんどいない。しかし、ノルウェーサッカー協会のリーセ・クラヴェネス会長は抽選会後、ノルウェーのテレビ局にこう語っている。

「今日はいろいろなものを見せられたが、真面目に抽選会をやっているようには見えなかった。我々はこうした事態を深刻に受け止め、警戒を怠らず、目を閉ざすことなく、FIFAがサッカーそのものに集中し、こうした事柄に注力しないよう働きかけなければならない」

 ノルウェー代表監督ストーレ・ソルバッケンもインタビューでこう語った。

「今回の抽選会はいろいろな意味で異常だった。サッカーのことはほんの少しで、我々は時間をムダにした。おかしいと思うことに対して、我々は正直に声を上げるべきだ」

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