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【プレミアリーグ】首位アーセナルの特殊な攻守の構造 ブカヨ・サカの力が大きく影響している (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【強力なウイングが必要】

 ペナ右角の角度からのカットインは、ゴールと平行ではなく自陣へ戻るような角度になるのだが、そこから逆ポストへ持っていくシュートが得意技。右足を前に出して左足でボールに触る、いわゆる軸足リードの体勢からグイッとカットイン。ゴールから遠ざかりながらファーポストへねじ込めるのは、尻の筋力が強いからだろう。

 サカはさほどトリッキーなフェイントは使っていない。シンプルに縦へ持ち出すか、カットインか。ただ、この表裏のどちらも強力なので守備側は防ぐのが難しい。

 表裏が均等に強いのは、ドリブルと裏抜けの両方ができるのと同じだ。サカにとっては、どちらかに有利な状態を作ればいいだけと言える。そしてそのための駆け引きを行なっている。

 試合開始直後のサカは、右サイドでパスを受けても簡単に下げることが多い。2、3回はワンタッチで戻して対面のDFの反応を見ている。何回かこれをやられると、DFは同じ強度で寄せていけなくなるので、その時は止めて1対1を仕掛ける。逆にあくまで間合いを詰めてくる相手には、裏へ走ってパスを受ける。止めて仕掛ける時も、一歩下がって間合いを開けて、相手が飛び込んでくるのか、止まるのかの反応を見る。

 こうした駆け引きはどのウイングもやっているのだが、サカの場合はドリブルも裏抜けもあり、カットインも縦突破もあり、いずれも威力があるので駆け引きで勝負が決まってしまうケースが多い。

 相手に寄せきられた時のキープにも安定感がある。左足にボールを置いての右半身はコンタクトに強く、こうなったらほぼ奪われない。攻撃時のボールを守る能力が高く、それがチーム全体の保持力にもつながっている。

 守備意識も高いサカは、アーセナルの構造のなかでしっかり貢献するとともに、シンプルかつ効果抜群の個の能力で違いを作る特別な存在だ。その特別な個がアーセナルの攻守の構造に大きな影響を与えている。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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