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【欧州サッカー】ディルク・カイトは少し早く生まれすぎた リバプールを支え続けた「世界一の戦術理解度」

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第37回】ディルク・カイト(オランダ)

 サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。

 第37回は、2000年代以降のオランダ代表を長く牽引したディルク・カイトを取り上げる。世界的なストライカーを輩出してきたオレンジ軍団のなかでも、彼は「異質」なタイプだった。リバプールが今もっとも欲しい人材は、カイトのようなハードワーカーだ。

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ディルク・カイト/1980年7月22日生まれ、オランダ・南ホラント州出身 photo by Getty Imagesディルク・カイト/1980年7月22日生まれ、オランダ・南ホラント州出身 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る リバプールが今季プレミアリーグのシーズン序盤で4連敗を喫した。

 アレクサンデル・イサク、フロリアン・ヴィルツ、ジェレミー・フリンポンといった新戦力のフィット感、モハメド・サラーの衰え、前線でボールを追いまわしたルイス・ディアスのバイエルン移籍など、世界中のメディアが主犯を探し求めている。

「多くの変化があった。昨シーズンのようにうまくはいかない」

 シーズン前からフィルジル・ファン・ダイクが語っていた以上に、ディフェンディングチャンピオンは苦しんでいる。

 たしかに前線の運動量は必要だ。少しタイムスリップして、ディルク・カイトを連れてこられたら、状況は一変するに違いない。

 屈指のハードワーカーだった。

 ある時はファイナルサードで、またある時は最終ラインで、そしてまたある時は中盤で、何があっても手を抜かなかった。無類のタフネス、卓越した状況判断、高い守備意識など、カイトの献身性は2000年代中期から後期のリバプールを支え続けた。

 当時のチームの強みは、スティーヴン・ジェラードとシャビ・アロンソが織りなす中盤だった。中長距離のパスを巧みに操り、くさびのパスも鋭い。ただ、彼らの持ち味は攻撃であり、相手ボールになった際の反応には難があった。この弱みを補っていたのが、カイトである。

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著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

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