【プレミアリーグ】首位アーセナルの特殊な攻守の構造 ブカヨ・サカの力が大きく影響している (2ページ目)
【攻撃は慎重、守備は大胆】
攻撃は慎重。スペースがあれば速い攻め込みを仕掛けるが、無理に急がない。どちらかと言えばボールを保持して押し込むことを優先している。
逆に守備は大胆。というかアグレッシブだ。失う場所は敵陣、失ったらすぐさま奪いにいく。ボールより相手ゴール側にいる選手の戻りが非常に速いのが特徴だ。ただ、プレスバックのようには目立たないが、攻撃している最中にすでに守備の準備をしていることが大きい。攻撃時にボールより後方にいる選手は相手選手を射程圏内に収め、失ったら直ちにプレスに行く準備をしている。
直ちにボールホルダーへ寄せる準備ができている後方、直ちにスプリントで戻る前方。この両者の挟み込みで相手のカウンターを減速させ、ボールを奪ってしまう。アルテタ監督の言う、「どこでボールを失うのか、どう反応するか」の構造が端的に表われている。
現在、トップクラスのチームはこうした「構造」を理解したうえでプレーするようになった。守備が攻撃的で攻撃が慎重というのは一般的ではないように感じるが、ボールは守るもので、相手のボールは剥奪するものである。ボールを守るほうに慎重さ、奪うほうに獰猛さが求められるのは元来サッカーが持っている普通の状態であり、攻撃・守備という言葉の響きとは逆なのだ。
慎重にボールを運んでいくと相手には引かれやすい。その際に決め手になるのはサイド攻撃で、強力なウイングを配置するのもグアルディオラ、アルテタ両監督の共通点だ。
アーセナルの右サイドに配置されるブカヨ・サカは、プレミアリーグでも最高クラスのアタッカーだ。昨季は25試合に出場して6得点10アシスト。パス成功率83.7%、xA(アシスト期待値)はリーグ上位1%内だった。
サカは絶対的なゾーンを持っている。ペナルティーエリア右角からタッチラインへの延長線、ここでボールを持てば何でもできる。カットインからの正確なシュート、ラストパス、縦への突破と自在。ここでサカにボールを持たせるのはアーセナルの戦術であり、その意味では「戦術サカ」となっている。
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