サッカー日本代表に暗雲? プレミアリーグで消極ぶりが目立つ三笘薫に何が起きているのか (3ページ目)
【プレミアで3本の指に入る左ウイングだった】
抜けない可能性がある縦に対し、カットインにその心配はない。楽な選択肢、弱気なプレーでもあるのだ。難易度が高いのは縦。勝負という言い回しもできる。対するカットインは勝負ではない。自ら得点を決める可能性は芽生えるが、それ以外は、縦を突いてマイナスに折り返すプレーに比べ、チャンス度で劣る。
ミンテは右だけでなく左でもプレーできる。チェルシー戦でも左で縦抜きを決めている。一方、三笘は右ができない。多機能的ではない。入れ替わることができない。左がダメならそれでおしまい。右ウイングと入れ替わり、気分を変えることができない。これは三笘に限らず、堂安律、中村敬斗らにも言えることだが、そうした意味では古典的なウイングだ。日本代表の問題点でもある。選手配置の選択肢を狭める一因になっている。
三笘は右肩上がりを示す日本サッカーを象徴する選手だった。世界ナンバーワンのプレミアリーグで5本、いや3本の指に入る左ウイングだった。それが日本代表に好影響を与えていた。勇気、勢いをもたらしていた。その三笘が失速すれば、日本の先行きに暗雲が立ち込める。
メキシコ戦、アメリカ戦で日本の得点がゼロに終わった理由でもある。わかりやすいのはアメリカ戦で、三笘が途中交代でピッチに入っても、状況は少しも改善しなかった。日本の劣勢はむしろ加速した。
ブライトンの次戦は10月5日のウォルバーハンプトン戦だ。そこで三笘は先発を飾ることができるか。飾ることができれば、今回の招集見送りが故障ではないことを意味する。森保一監督は会見で、三笘を招集しない理由について多くを語らなかったが、その答えはウルブス戦に隠されている。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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