【ボクシング】"モンスター"井上尚弥は難敵アフマダリエフに...在米記者たちの勝敗予想はまさかの全員一致
9月14日に世界戦を戦う井上尚弥(左)とアフマダリエフ photo by Kyodo News
後編:識者が語る9.14「井上尚弥vs.アフマダリエフ」予想
9月14日、愛知県名古屋市に竣工したばかりのIGアリーナ(愛知国際アリーナ)で行なわれる世界スーパーバンタム級四団体統一王者・井上尚弥(大橋)の5度目の防衛戦。対戦相手は近年では最強の実力を誇ると言われるWBA暫定王者のムロジョン・"MJ"・アフマダリエフ(ウズベキスタン)だが、井上、アフマダリエフはそれぞれどのような戦略を立てて臨むのか。
前編では、アフマダリエフが勝機を見出すためのポイント、またこの1年の試合ではダウンを喫する場面もある井上の現在の現状について、識者4人に意見を述べてもらったが、後編ではずばりこの試合の行方を占ってもらった。
【パネリスト】
◆スティーブ・キム(元ESPN.comのメインライター。韓国系アメリカ人。現在はフリーランスで活動し、業界内に幅広い人脈を持つ X: @SteveKim323)
◆ロン・グッダル(ラスベガス在住。FightHype.comのリード・マネージング・エディター X : @FightHypeRonG)
◆エイブラハム・ゴンサレス(FightsATW.comの創始者で、全米ボクシング記者協会の会員。リングマガジンのランキング選定委員でもある X: @abeG718)
◆杉浦大介(ニューヨーク在住スポーツライター。全米ボクシング記者協会会員&リングマガジンのランキング選定委員 X : @daisukesugiura)
3. この試合の勝敗を分ける鍵は?
キム : 井上はここ数年よりアクティブに試合をこなしているし、スピードにアドバンテージがある。それにサウスポーと多く戦ってきた経験があるので、再び左利きの相手に対峙しても、しっかり適応できるだろう。井上は完璧なプロフェッショナルで、誰も軽視するようなことはしない。最終的には、そのスピードがこの試合を分ける要因になると思う。
グッダル : フットワークが最も重要だと思う。MJは角度を変え、タイミングをずらして井上のバランスを崩しにかかるだろう。前編でも触れたように、MJは井上にプレッシャーをかけてくるはずで、その場合、井上はアウトボクシングでMJを抑える必要がある。一方で、もしMJが慎重なスタイルを選んだ場合、井上は相手の逃げ場をなくして主導権を握らなければいけない。ただし前に出すぎればカウンターを食らうリスクもあるので、その駆け引きが鍵になる。
ゴンサレス : 井上の直近4試合は、このアフマダリエフ戦を見据えたものだったと言っていい。4人のうち3人はサウスポーであり、直近の対戦相手ラモン・カルデナス(アメリカ)はワンパンチで試合を終わらせるパワーを持っていた。井上がハイペースで試合をこなしてきた一方で、アフマダリエフは対照的に2022年以降わずか5試合しかしていない。ただ、リングに立てば、なぜMJが長年多くのボクサーから避けられてきたのかを誰もが思い知らされた。そんなアフマダリエフに対して、井上は相手のワイドスタンスを突いて、右フックをボディに打ち込むことでバランスを崩すことができるだろう。
鍵になるのは、アフマダリエフが大きなフックを振ってきたときに、真ん中へストレートの右を打ち込むこと。辛抱強さとボディ攻撃が、井上が王座を守るうえでのポイントになる。
杉浦 : やはり実力は井上が上であり、ポイントとなるのは精神的なコンディション。東京ドームでのルイス・ネリ(メキシコ)戦、ラスベガスでのカルデナス戦ではその舞台設定もあり、井上はやや"入れこみすぎ"の状態だった。ただ、誰もが認める実力者であるアフマダリエフ戦で期待されているのは、"激しく面白い戦い"ではなく、"最高級の技量の持ち主であることをあらためて示す勝ち方"。そのことを理解しているはずの王者は、より研ぎ澄まされた状態で名古屋のリングに上がってくるだろう。オマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦、ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)戦、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦、ノニト・ドネア(フィリピン)との再戦、スティーブン・フルトン(アメリカ)戦など、強豪と対戦した時にこそ井上のベストの力は引き出される。今回は約2年前のフルトン戦以来、久々のパーフェクトゲームでファンを魅了してくれるのではないか。
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著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

