検索

【欧州サッカー】ドログバを奮い立たせたモウリーニョのひと言「チェルシーなら22人のキングの頂点に立てる」 (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【ファウルを誘うプレーは慎め】

 ただ、ジョゼ・モウリーニョ監督は絶対の自信を持っていた。のちに明かされたロマン・アブラモヴィッチ・オーナーとの会話でも証明されている。

「誰を獲ればいいんだい?」(アブラモヴィッチ)

「四の五の言わずにドログバで」(モウリーニョ)

 意外な人選にアブラモヴィッチは驚いたという。側近が提出したリストに「ディディエ・ドログバ」の名前は記載されていなかったようだ。

 しかし、モウリーニョに「チェルシー王国建立」を託した以上は、現場の声を最優先するしかない。そして、この人選は的中した。

 肉弾戦をモノともしないフィジカル、強烈で正確なシュート、打点の高いヘディング、オフ・ザ・ボールにおける秀逸なリアクション、独りよがりにならないサポート姿勢など、チェルシーの前線でドログバは異彩を放った。

 さらにフリーキックの精度も高く、右足インサイドから放たれるキックは無回転、かつパワフルだった。そう、足の内側で強烈な一撃を操っていたのだ。単なるターゲットマンではない。

 負傷のためにおよそ2カ月の戦線離脱を余儀なくされたものの、ジョー・コール、アリエン・ロッベン、フランク・ランパードと織り成す攻撃は迫力に満ちあふれていた。コートジボワール出身のストライカーは、50年ぶり2回目のトップリーグ優勝に多大な貢献を果たしている。

 また、ランパードとジョン・テリーの存在も頼もしかった。シミュレーションを繰り返すドログバに、ふたりの先輩は忠告した。

「イングランドのサポーターはアンフェアな行為を最も嫌う。ファウルを誘うようなプレーは慎め」

 以降、ドログバは露骨に倒れなくなった。誰にも負けない強靭なフィジカルを持っているのだから、シミュレーションなど必要ない。

「ふたりには感謝している。何も言われなかったら、バカバカしい行為を繰り返していたかもしれないからね。だけど彼らは、特にテリーは、もっと汚かったよ(笑)」

 チェルシー時代を語る際のドログバは、いつも楽しそうだ。

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る