ベリンガムが一発退場になった問題の核心 イギリス人選手はなぜリーガで手こずるのか (3ページ目)
「いつまで経っても言葉を話せず、適応力に欠ける」
それがイギリス人選手の定説となり、リネカー以後、バルサのトップチームにはひとりもいない。
一方でイギリス人は、ドイツ、ブンデスリーガとの相性は悪くないと言える。ベリンガムもドルトムントで頭角を現し、今シーズンもハリー・ケインがバイエルンで活躍している。
ドイツ人は、仕事ができさえすれば、言葉が話せないことなどで外国人選手を軽んじたりしない。コミュニケーション不足のストレスに精神を削られずに済むのだろう。その点、日本人選手がブンデスを"楽園"にしているのも必然だ。
レアル・ソシエダの久保建英が、ラ・リーガで際立ったプレーを見せられているのは語学力だけが理由ではない。しかし、適応面では強力なアドバンテージとなっているだろう。スペイン人はスペイン語がわからないだけで、人を侮るようなところがあるが、久保は「スペイン人以上にスペイン人」と言われるほどの気の強さの持ち主だ。
ベリンガムは、技術やフィジカルだけでなく、戦術理解力やメンタリティも優れている。言わばコンプリートな選手と言える。1年目の昨シーズンも、前半戦は絶対的なMVPだった。
ただ、後半戦は懸念されるほどパワーダウンしていた。もしベリンガムがレアル・マドリードで伝説的な選手になるとしたら――。それは「Fuck」ではなく、スペイン語で怒りや不満を示せるようになってからかもしれない。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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