荻原拓也「夢が叶った」CL初出場 バイエルン戦で初ゴールも「残酷なほどの差を感じた」
歓喜と悲哀──対極するふたつの感情が入り交じっていた。ただし、試合を終えて、心の中を埋め尽くしていったのは、痛みと悔しさだった。
「起き上がる前に、また殴られるような感覚でした。それも何度も、何度も。それくらい衝撃的でした」
9月17日、ディナモ・ザグレブ(クロアチア)に所属する荻原拓也は、夢だったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の舞台に立った。
CL初出場でいきなりゴールを決めた荻原拓也だったが... photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 今季より大会の仕様が変更されたリーグフェーズ第1節で、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)と対戦。アリアンツ・アレーナ(バイエルンのホームスタジアム)のピッチに整列して、アンセムを聴いた時には、これまで感じたことのない高揚感に包まれた。
「この舞台に立てたことが、まず誇らしかったし、何ものにも代えがたかったですね。選ばれた者しか許されないピッチに立てたことがすごくうれしくて、まさに夢が叶った瞬間でした。ほんと、エモーショナルでした」
対戦相手にはマヌエル・ノイヤーやハリー・ケイン、セルジュ・ニャブリといった錚々(そうそう)たる顔ぶれが並んでいた。
「彼らと同じピッチに立てることに感動を覚えましたけど、入場前の通路で見た時には、思っていたよりも身体の大きさは感じなかった。それこそ、左サイドバックのアルフォンソ・デイビスは大好きな選手のひとりで、憧れでもあったのですが、実際に見ると、思っていたよりも自分と身長や体格は変わらなかった。もっと身体も大きくて、足も長いイメージだったんですよね。
だから、試合が始まる前までは、自分も戦えるのではないかと思っていました。試合をやる前までは......」
荻原が「試合前までは」と強調したように、ディナモ・ザグレブはCLでのワースト記録となる9失点を喫して、バイエルンに屈した。その失点数が示すように、左ウイングバックとして73分までプレーした荻原も、ほとんどの時間を守備に費やした。
「5バックで戦えば守備も堅く、ある程度は相手の攻撃を防げるだろうという想定を持って試合に臨みましたが、実際はボールホルダーに対してまったくプレッシャーがかからなかった。加えて、バイエルンはしっかりとしたチーム戦術があるため、必ずどこかでフリーになる選手を作られてしまった」
1 / 5
著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。