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遠藤航が就いた日本人サッカー選手史上の最高位 リバプールだから可能だった出世劇 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【超優良物件だったリバプールのアンカー】

 代表格は三笘薫で、だから彼がリバプールに買われていったのなら腑に落ちる。なぜ遠藤だったのか。31歳のベテランが、シュツットガルトから2階級特進をはたし、リバプールのアンカーに収まる姿は、奇跡的と言いたくもなる。監督の感覚に委ねられる部分が大きい、サッカーならではの事例と言うしかない。

 もし遠藤の移籍先がマンチェスター・シティだったなら、ロドリに先んじることはできなかっただろう。現役時代、技巧派のアンカーとして知られたジョゼップ・グアルディオラ監督のお眼鏡に適ったとは思えない。マンチェスター・ユナイテッドでも難しかっただろう。欧州のトップチームだった10年前と違い、現在の同チームはCL出場もおぼつかないプレミアの第2グループだ。ファンの想いと現実とのギャップが、ちょっとした問題に火をつけ拡大させる可能性が常にある。

 バイエルンでも難しかったと思われる。ドイツ国内に明確に存在する上下関係が、2階級特進の妨げになったはずだ。また、スペインの上位クラブの場合は、よりうまさを要求される。久保建英効果はあるが、日本人選手に対する偏見も少なからず残っている。

 そういう意味でリバプールのアンカーという職は、遠藤にとって超優良物件だったのだ。

 加入が今季であったことも幸いした可能性がある。リバプールは昨季のプレミアで5位に沈んだため、今季は2016-17シーズン以来、7シーズンぶりにチャンピオンズリーグ(CL)出場を逃した。ELを戦っているわけだが、ELとCLとの間にはレベル差がある。

 そのELでリバプールは英国のブックメーカー各社から大本命に推されている。ELのグループリーグを戦った3チーム(サン・ジロワーズ、トゥールーズ、LASK)は紛れもなく格下だった。サッカー界にはカップ戦要員という言葉がある。イングランドで言えば、たとえばリーグカップには出場機会の少ない選手を送り込む。CLやプレミアに比べると落ちるメンバーで臨もうとするが、リバプールにとってはELも、国内カップ戦に近い位置づけになる。

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