イスラエル、パレスチナでスポーツ界にも多くの犠牲者が 戦争は未来をも奪おうとしている (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 イスラエルのサッカーU-19代表チームは、2022年のU-19ヨーロッパ選手権で多くの欧州の強豪を破って2位につけ、今年6月にアルゼンチンで行なわれたU-20W杯では日本などを破って3位となった。イスラエル代表がサッカーの国際大会でこれほど高い順位についたことはいまだかつてなかった。

 12年ぶりに2024年パリオリンピックの出場権も獲得し、大きな期待がかかっていた。しかし、大会まで1年をきり、他の国の選手たちが練習にいそしむなか、彼らはほとんど何もできない状態にある。選手たちのほとんどはイスラエル国内のクラブチームに所属しており、大きな後れを取ることは確かだろう。

 サッカーのパレスチナ代表は、これまで一度もW杯に出場したことはない。しかし2026年大会は、アジアに8.5の出場枠が与えられるとあって、他のW杯未出場国と同様、「もしかしたら......」という期待を抱いていた。現在のパレスチナのFIFAランキングはアジア46カ国中、16位だ。まるで非現実的な話ではないだろう。

 パレスチナはホームで圧倒的な強さを誇る。実はW杯予選で、ホームでは一度も負けたことがない。だからこそW杯という夢を掴むには、ホーム戦が大きなカギを握っていた。それなのにパレスチナは自国でプレーできない。ホーム戦だったはずの11月21日のオーストラリア戦は、中立地のクウェートで戦うことになった。しかし、それさえもまだ確実ではない。

 この戦争はスポーツの「現在」ばかりではなく、「未来」までも奪おうとしている。

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