久保建英がバルサの「包囲網」を打ち破る活躍 「美しき敗者」のお株を奪う (3ページ目)
ラ・レアルが作り上げた仕組みのなかで久保は躍動していた。スペースやタイミングを味方とし、連動のなかで高い技術を出す。プレーがオートマチックに展開し、バルサを凌駕した。
「タケはラ・レアルのベストプレーヤーのひとりだった。バルサディフェンス陣にとっては終始、"厄介者"だった」
バルサ寄りのメディアである『エル・ムンド・デポルティーボ』も、そんな表現で賞賛するほどほどだった。
終盤、ラ・レアルはオヤルサバル、バレネチェアを下げ、新たに2人を投入したが、これで流れを失った。交代選手も実力者が揃うバルサの物量作戦を浴び、たじたじとなる。最後は押し込まれて相手の技術の高さを出させてしまい、豪快にネットを揺らされた。
久保は最後までピッチに立っていただけに、忸怩たる思いだろう。
「相手のほうが決定的チャンスを作っていた。でも、これがフットボールだ」
一撃で試合を制したアラウホの言葉も、ひとつの真理と言える。バルサのスペクタクル伝説も、劇的な勝利を伴ったことで完結した。美しき敗者、というのはあくまで理念だ。しかしクライフなら、どちらの戦いを賞賛し、誰を褒めるだろうか。
久保はレアル・マドリードに続いてバルサも苦しめており、進むべき道は示している。今はひとつひとつの戦いを踏み越えてくしかない。11月8日は、本拠地レアレ・アレーナでチャンピオンズリーグ、ポルトガル王者ベンフィカとのリターンマッチだ。
久保建英や鎌田大地、三笘薫など日本人選手の活躍にも期待!
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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