エムバペ、PSG残留までの内幕 2年連続の「茶番劇」でイメージは悪化した (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【来夏のレアル移籍を模索中】

 さらにPSG関係者によると、ネイマールが移籍したアル・ヒラルからエムバペにも巨額のオファーがあり、チームはこれにOKを出していたという。来年タダで手放すぐらいならそのほうがいいと思ったらしいが、エムバペはサウジアラビアに行くつもりはなかった。

 つまり、レアル・マドリード行きがなくなった段階で、エムバペに現実的に残されたのはPSGでプレーを続けることだけだった。なにより契約はまだ1年残っている。それでもすぐに残留を公言しなかったのは、約1週間をかけて、PSGに残った場合に何が起こるか、どうしたら有利な条件を引き出せるかを精査していたからだろう。

 エムバペがレアル・マドリードに行きたいのは本心だ。来夏、確実に移籍できるよう、彼は今も両チームと話し合いをしている。PSGとの契約は2024年6月で切れるため、エムバペはこのままでいけば移籍金ゼロでチームを出て行くこともできる。しかし、それではPSGが納得いかない。金というよりはメンツの問題だ。現在はPSG、エムバペ、レアル・マドリードの三者がともに満足いくような契約の形を模索しているとも聞く。

 8月30日、PSGのアル・ケライフィ会長が「エムバペとの話し合いはうまくいっている」と発言したのはこのことである。PSGとしては、彼の態度にいろいろ思うところはあるだろうが、それでも3人の世界レベルのスターを一度に失うわけにはいかない。

 ただしエムバペにとって、PSGはこれまでのように居心地のいい場所ではないかもしれない。

「どんなユニホームを着てもいいからCLで優勝したい」「PSGではCLを勝つのは難しいかもしれない」......。

 彼が『フランスフットボール』誌のインタビューで語った言葉を、チームメイトもサポーターも忘れてはいない。今さら彼がユニホームにキスをして、「このチームに残れてうれしい」と言ったとしても、空々しいだけだ(だからこそ何も言わないのかもしれないが)。

 実際、『フランスフットボール』にインタビューが掲載されると、6人の選手(名前は明かされていない)がアル・ケライフィ会長に「こんなチームを軽んじる発言をする選手とは、ともにプレーしたくない」と抗議の書簡を送ったという。

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