PSG、「スター路線」からの決別 エムバペがいなくても勝てるチームを建設中

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

どうなるパリ・サンジェルマン(後編)

 世界屈指のトップスター3人を擁していたパリ・サンジェルマン(PSG)。しかし、そのチームは消えてなくなってしまった。今回はかろうじてキリアン・エムバペを引き留めているが、その彼も来夏にはほぼ出て行くことは間違いないだろう。

「エムバペは気に入らない選手を追い出すことに成功したが、その結果、チームは弱くなるという矛盾に陥った」と前編に書いたが、これは事実である。昨シーズンまでのPSGは崩壊したと言っていい。リオネル・メッシ、ネイマールのほかにもマウロ・イカルディ、アブドゥ・ディアロ、レアンドロ・パレデス、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、レナト・サンチェスなど、レンタルを含めて実に20人の選手がこの夏パリをあとにした。

 しかし、私は決してPSGの今後を悲観してはいない。それどころか、新しくなったPSGを高く買っている。

 これまでのPSGはサッカーチームというよりは「ショー」のようなチームだった。チームがカタール資本になって以来、煌びやかなスターたちが名を連ねた。デイビッド・ベッカム、ズラタン・イブラヒモビッチ、エディンソン・カバーニ、ネイマール、メッシ......。

 湯水のように金を使い、次々に新しいスターを連れてくるので、選手ひとりひとりを大事にしてこなかった。例えばGKケイロル・ナバスを獲得した2年後にジャンルイジ・ドンナルンマを獲得するというようなことも平気でやっていた。選手だけではない。メッシを連れてきて、ネイマールを残留させるという離れ業をやってのけたスポーツディレクターのレオナルドも、その功績を評価することなくクビを切った。

 揉め事も絶えなかった。「俺にボールが回ってこない」「あいつがボールをよこさない」......。試合後には毎回、そんな不協和音が聞こえてくる。PKを誰が蹴るかを、これほどピッチで言い争うチームも珍しかっただろう。特にカバーニ対ネイマール、ネイマール対エムバペの諍(いさか)いは世界中に知れ渡った。スターばかりを集めたら、こうなることは目に見えていた。

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