PSG、「スター路線」からの決別 エムバペがいなくても勝てるチームを建設中 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【エムバペも勝手なことはできない】

 新加入ではないが、PSGの下部組織出身のウォーレン・ザイル・エメリも今後、出番が増えそうだ。昨年なんと16歳でトップチームに昇格し、すでにゴールを決めている才能の持ち主だ。

 フランス人を多く獲得したのもよかったと思う。同じ言葉でしゃべれる集団がいるのは大事なことだ。「スター」である必要がない彼らは、エムバペが「PKを蹴りたい」と主張すれば、言い争わずに彼に蹴らせるだろう。

 ただし、エムバペも今年はそうそう勝手なことはできないはずだ。ルイス・エンリケが許さないだろうし、あまりイメージを損なうと、レアル・マドリードが彼の獲得をためらう危険性もある。

 こうしてPSGはここ数年で初めて、本物のチームになろうとしている。

 ただしすぐに結果を出すのは難しいだろう。新しい監督、新しい選手、新しいフィロソフィー。これほど大きく変わったチームに時間が必要なのはサッカー界の常だ。今はまだ建設中というところだろう。だがそれがうまく軌道に乗った時、どんなチームを見ることができるのか楽しみである。

 新しくなったのはチームだけではない。PSGはポワシーに3億ユーロ(約480億円)をかけて新しいトレーニングセンターを建設した。74ヘクタールの広大な敷地に、17のコート、ジム、プール、シアタールーム、選手が泊まれる宿泊施設にレストラン、メディカルセンターを完備。今後は3000人収容のスタジアムも建設予定だ。

 新しいPSGと古いPSGの境目はジャパンツアーであったと思う。日本でPSGは1勝もできなかったが、ネイマールもエムバペもいないチームだった。そこから新たな一行が書き始められたのだと、私は信じている。

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