エムバペ、PSG残留までの内幕 2年連続の「茶番劇」でイメージは悪化した

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

どうなるパリ・サンジェルマン(前編)

 一時期はレアル・マドリード行きがほぼ確定とも言われていたキリアン・エムバペは、今季も"また"パリ・サンジェルマン(PSG)に残ることになりそうだ。「なりそうだ」としたのは、エムバペはこの件に関して、まだ何の発言もしていないからだ。ただ、今の時点では他に選択肢はないだろう。

 それにしてもこれはどこかで見た風景だ。

 去年の夏も、エムバペは限りなくレアル・マドリードに近づき、レアル・マドリードもほぼエムバペを手中に収めたと思っていた。しかし、最後の最後になって彼はPSG残留を選んだ。決め手となったのはPSGが示したレアル・マドリード以上の高額オファー、そしてなによりチームが彼に与えることを約束した権力だった。PSGはエムバペに、チームの運営方針に口を出せる力を与えたのだ。

 こうしてエムバペはPSGの「王」となった。監督もチームディレクターもチームメイトの人事にも口を出せる。これだけはレアルにはできない芸当であった。

 この時はフランスのエマニュエル・マクロン大統領が直々にエムバペに電話をかけてきて、こう懇願したという。

「私個人としても君にはフランスから出ないでほしい。君はこの国にとって大事な人、フランスナンバー1の選手がフランス以外でプレーしたらこの国の恥だ」

 これについてフランスのメディアは皮肉も込めて「レアルとPSG、そして大統領さえエムバペの前にひざまずく」とタイトルをうった。

今季はパリ・サンジェルマンでプレーを続けるキリアン・エムバペ photo by AP/AFLO今季はパリ・サンジェルマンでプレーを続けるキリアン・エムバペ photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る 今年も彼はまた同じことを繰り返した。レアル・マドリードとPSGを天秤にかけ、結局は残留したのだ。

 エムバペがレアル・マドリードに行きたいのは確かであり、レアル・マドリードも彼にラブコールを送り続けている。相思相愛である。それならばさっさとレアル・マドリード行きを決めればいいものを、去就を決めるのに、のらりくらりと2カ月も要した。

 ごねればごねるほどチームが出す金額が上がる、自分にとっていい条件で契約できる。エムバペと、彼のマネージメントの一切を仕切る彼の母ファイザ・ラマリは、これまでの成功体験からそう信じてしまっていたのかもしれない。

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