「暴動はいつ起きても不思議ではない」インドネシアのサッカーリーグで活躍 初の優勝を経験した日本人選手の苦労「成功するのは難しい」 (3ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by Nanbu Kenzo

【数千万円を稼ぐ選手もいる】

 待遇面も悪くない。インドネシア最大のビッグクラブ、ペルシジャ・ジャカルタは昨季、元ドイツ代表で指導者として実績のあるトーマス・ドルが指揮を執り、チェコ代表としてユーロ2020などに出場したFWミハエル・クレメンチクらは1億円以上の年俸を手にしている。2022-23シーズン終了時、インドネシア1部に所属していた7人の日本人選手の収入は、少なくとも手取りで1000万円は超えているとされ、なかにはJ1の強豪のレギュラークラス並の数千万円を得ている者もいるという。

 かつて東南アジアでは、2010年代半ばにタイリーグが盛り上がりを見せ、多くの日本人選手が好条件でプレーし、最盛期にはその数が60人を超えていた時期があった。現在、そうしたサッカーバブルの波がインドネシアに来つつあるのだろう。

「タイからインドネシアに来ましたが、盛り上がりはこっちのほうが圧倒的。タイも盛況だった時期はあったみたいですが、自分がいた頃にちょうどコロナがあって、リーグ再開後は無観客から始まり、有観客になっても以前のような盛り上がりは戻っていなかった印象です。

 インドネシアでは一昨年に(Jリーグ経験のない)丸川くん(太誠、PSISスマラン)が年間最優秀選手に選出されたことで、僕を含めた日本人数人が移籍し、昨季はそれぞれが頑張っていた。今後はさらに日本人選手が増えるかもしれないですね」

 ただ、インドネシアは1万を超える島からなる国で、民族も多様だ。環境に馴染むのは簡単ではない。

 南部の在籍するPSMは、インドネシアで4番目に大きいスラウェシ島のマカッサルが本拠地。ジャカルタのあるジャワ島やバリ島のような観光客が多く訪れる場所ではないため、外国人にとっては生活するうえでの不便が少なくない。

「アウェーはすべて飛行機移動ですし、ホームのスタジアムも昨季は改修中で、片道4時間かけて移動していました。高速道路はなく、試合後も後泊はないので、ガタガタの下道を時間をかけて帰ってくるわけです。

 スラウェシ島は田舎で娯楽もなく、生活しやすいとは言えません。ふだんは嫁と一緒に食事をしていましたが、なかなか思いどおりの食材が手に入らず、外食も日本食は"もどき"しかなくて(笑)。自宅は3LDKのマンションで設備はいいのですが、場所がモスクのすぐ傍で、毎日、アザーン(礼拝時間の呼びかけ)が夜中でも大音響で聞こえてきたのはかなりのストレスでした。まあ、こればかりは宗教的なことなので仕方ないんですけどね」

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