ブラジル人記者が嘆くセレソンの現状 モロッコ戦後の主将カゼミーロのひと言に、国民は世界の終わりを感じた (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【ミスを連発したモロッコ戦】

 彼らはヨーロッパの強豪から最も注目されている若手である。また、ブラジル国内で活躍しながらもチッチの下ではチャンスを得られなかったパルメイラスのホニやラファエル・ヴェイガなども出場した。

 多くの若手を試そうという意図はわかる。しかし、なにせ時間が足りなかった。今回のチームにはこれまで一度もともにプレーしたことのない選手が多かった。ベテランに若手をミックスするならば、それなりの時間がかかる。ほとんど練習時間はなくぶっつけ本番ではチームとは呼べない。

 また、プレミアの強豪アーセナルのエースであるガブリエル・マルティネリや、これまでチームの中心となってきたアリソン、マルキーニョス、ダニーロが呼ばれなかったことに、ブラジル人は首をひねった。

 一方、モロッコは落ち着いていた。6万人の大観衆に支えられ、W杯での活躍が彼らをよりどん欲にさせたのか、カタールで見た以上に攻撃的だった。90分間にわたり危険で、何度もブラジルゴールを脅かし、中盤を支配した。世界4位にふさわしいチームであることを証明した。

 試合はブラジルの失態から動いた。エメルソン・ロイヤル(トッテナム)が、エリア付近でまるで子どものような単純なミスからボールを失い、モロッコのFWソフィアン・ブファルがすかさずゴールを決めた。それに比べるとブラジルの同点ゴールは偶然の産物だった。カゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)のシュートが相手GKのキャッチミスでゴールとなった。

 なかなか敵陣内に攻め上がれない4-4-2のフォーメーションを是正しようと、メネゼスはロドリゴ(レアル・マドリード)を偽9番としたが、この日の彼はひどかった。そしてカタールでもプレーしたエデル・ミリトン(レアル・マドリード)とアントニー(マンチェスター・ユナイテッド)の連係ミスを見逃さなかったモロッコが追加点をあげた。

 ヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴ。レアルでプレーするこのふたりがいればセレソンは安泰と信じていた人たちは完全に裏切られた。彼らが本当にモロッコゴールを脅かすことはほとんどなかった。

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