日本代表が破ったドイツ&スペインの現在。盤石とは言えない再スタートも、朗報はストライカーの台頭

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

 カタールW杯で日本が激闘を演じたドイツ、スペインは、どのようなリスタートをきったのか。

 日本はカタールでドイツ、スペインに辛くも勝利した。しかし、サッカーの質で上回ったとは言えないだろう。心理戦のところで、日本がなりふり構わず勝利に向かったのに対し、ドイツ、スペインに日本を軽んじるところがあったからこそ、"神風"を吹かせることができた。

 ドイツ、スペインにとってはユーロ2024が当面の目標になるが、それぞれまったく違ったアプローチで、新たな体制で挑んでいる――。

 まず、ドイツは開催国の特権でユーロ2024の予選を戦う必要がない。そのため、プレッシャーの少ない親善試合で、じっくりとチーム作りができる。

 カタールW杯で日本に敗れ、グループリーグで敗退した責任は大きいはずだが、ハンジ・フリック監督が留任したのも長期プランがあるからだろう。フリックはバイエルン・ミュンヘンであらゆるタイトルを手にした指揮官であり、"帝国復権"に期待がかかる。かつてドイツは無敵を誇ったが、2018年のロシアW杯でもグループリーグ敗退、ユーロ2020もベスト16で姿を消した。すっかり威力が衰えたという印象を覆す必要がある。

 第2次フリック・ドイツは、初陣のペルー戦で、2-0の勝利を飾っている。

 新エース候補に躍り出たのが、FW二クラス・フュルクルクだろう。見事に2得点を記録。ここ数年、ドイツはストライカー不在に悩まされていただけに朗報だ。

 フュルクルクはブレーメンのエースとして、ブンデスリーガの得点ランキングでトップを走る。すでに30歳と、遅咲きの部類に入るが、横からのボールに強く、クロスを呼び込む動きは秀逸で、何より嗅覚にも優れる。昨年11月のオマーン戦でデビュー以来、カタールW杯も含めて6試合で6得点と破格の存在感を見せている。

 ペルー戦に続くベルギー戦は2-3で敗れただけでなく、心配な内容だった。だが、フュルクルクはCKからヘディングで競り勝ち、それがハンド判定で得たPKをしっかり蹴り込み、不屈さを見せていた。セルジュ・ニャブリ、ジャマル・ムシアラ、レロイ・ザネ、カイ・ハベルツなどスター候補はいるだけに、フュルクルクのような泥臭いストライカーが、復権に向けた最後のピースとなるか。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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