三笘薫、プレミア日本人記録のゴールも見せ場はあとひとつだけ プレー機会が絶対的に少なかったのはなぜか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Reuter/AFLO

 プレミアリーグ6位(ブライトン)対7位(ブレントフォード)の一戦。開始10分、ブライトンはいきなり先制点を許す。相手センターバック、ポントゥス・ヤンソンに強烈なヘディング弾を叩き込まれてしまう。

 両者の勝ち点はともに42で、得失点差で争う関係にあった。プレミアの場合5位、6位チームにヨーロッパリーグ(EL)出場圏が与えられるので、両者はその出場権争いをかけたライバルでもあった。

 だが、ブライトンは消化試合数がブレントフォードより2試合少ない分、若干優位な立場にあった。消化試合数の関係で言えば、勝ち点7差で追う4位トッテナム・ホットスパーに対しても3試合分なく、チャンピオンズリーグ(CL)出場の可能性も十分残されている。ホームで行なわれるこの一戦はブレントフォードに差をつけ、スパーズに接近する大きなチャンスだった。

 ところが、早々に失点を食らい、暗雲が立ちこめるなかでの出来事だった。三笘薫に見せ場が訪れたのはその11分後。GKジェイソン・スティールとアイコンタクトを交わしたに違いない三笘は、左の大外からマーカーである相手のウイングバック、アーロン・ヒッキーの背後を突くように内寄りに走る。

 コントロールされたキーパーのキックがその鼻先に飛んできた。ワンバウンド、ツーバウンド、スリーバウンド目とボールが浮いた瞬間、三笘はトップスピードに乗りながらもボディバランスよく右足でフワリと、飛び出してきた相手GKの頭上越しにシュートを流し込んだ。

ブレントフォード戦で今季7ゴール目を決めた三笘薫(ブライトン)ブレントフォード戦で今季7ゴール目を決めた三笘薫(ブライトン)この記事に関連する写真を見る 同点弾が決まった瞬間だが、試合はそこから打ち合いの展開になる。ブレントフォードのFWイバン・トニーが1分後、2-1とするゴールを決めれば、ブライトンは1トップのダニー・ウェルベックが再び同点弾を叩き出す。

 三笘のプレーに再び目を奪われたのは後半38分だった。左ウイングの位置でボールを受けると、後ろ足である右足のインサイドでボールを運ぶように前進。その4タッチ目を大きく出し、対峙するヒッキーを縦にズラし抜き去ると、右足アウトを使った5タッチ目で右前方、ゴール寄りにさらに切れ込み、その足でゴール前にアウトサイドパスを送り込んだ。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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