久保建英が「感動的」なプレーで絶賛されるもフル出場ならず。「理解できない」交代はなぜ起こってしまったのか
「Impresionante」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、久保建英のプレーを「感動的な、驚異的な」という形容詞を用い、絶賛している。
「久保はラ・レアル(レアル・ソシエダ)で最高の選手だった。にもかかわらず、なぜイマノル(・アルグアシル監督)は70分で彼を代えてしまったのか、理解できない。ビジャレアルのディフェンスをパニックに陥らせていた。2本は決定機を演出し、バーに当てたシュートもあった......」
レアル・ソシエダの久保は日本代表戦からの帰りながら、疲労を見せず、ハイレベルのプレーを見せている。
「(リーガでは二桁に乗る)あと5点は取りたい」
野心的に語っていた久保は、古巣対決で、有言実行のプレーを見せたわけだ。だが......。
ビジャレアル戦に先発し、後半25分までプレーした久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る 4月2日、ラ・レアルは敵地でビジャレアルと対戦し、終盤にたて続けに失点して、2-0と敗れている。チャンピオンズリーグ(CL)出場権をかけた直接対決だっただけに、痛恨と言えるだろう。順位は4位を守ったが、3位のアトレティコ・マドリードには引き離された。
「ダビド・シルバと久保だけでは足りなかった」
『アス』紙の見出しは、言い得て妙だった。ふたりのパフォーマンスは、図抜けていた。しかし他の選手がこの日は不調で、ふたりのうち、ひとりが欠けただけでチームは急失速したのである。
4-4-2の2トップの一角で先発した久保は、交代を命じられるまで攻撃の中心だった。
かつての古巣相手で、サッカー観が合わなかった当時のウナイ・エメリ監督はすでに去っていたが、久保が「いろいろあった」と語っていたように、自分の価値を示す絶好の機会だったろう。序盤から躍動した。中盤ダイヤモンドのトップ下に位置したシルバが作ったチャンスを、相手GKペペ・レイナを脅かすシュートまで持ち込む。右へ流れる場面が多く、シルバへのヒールパスでお膳立てするなど、変幻自在の攻撃をリードしていた。
また、久保は守備のスイッチも入れている。出足の鋭いプレスバックから、敵陣で貴重なファウルを獲得した。前半終盤には相手のGKへのバックパスを読んでかっさらい、左から決定的なクロスを入れている。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。