三笘薫が敵ファンも魅了するプレーで勝利に貢献 CL出場を目指すブライントンには90年代のアヤックスのような強さがある

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by REX/AFLO

 ボーンマス対ブライトンは順位にすると6位対17位の対戦だった。欧州カップ戦出場を狙うブライトンと降格争いの真っ只中にいるボーンマス。置かれている状況が対照的な両チームだが、ボーンマスのホーム戦であることを加味しても、パッと見、10位以上の差がある関係にはなかった。プレミアリーグのレベルの高さを再認識させられた一戦とも言えた。

 試合間隔は両チームとも前戦から中3日。フラムに勝利し19位から降格圏を脱する17位に順位を上げたボーンマスに対し、ブライトンは7位のブレントフォードに3-3の引き分け。好試合ではあったが、後半45分にアレクシス・マクアリスターが決めたPKでかろうじて追いつくという苦戦を演じていた。

 三笘薫はその試合で、追加タイムを含めると92分間プレーした。過去10戦でプレー時間が90分に満たなかった試合はわずか3試合。選手交代枠5人制下では珍しい話だ。左ウイングをはじめとするアタッカーは、後半なかばにベンチに下がるのが普通だ。まさに使い詰め。オーバーワークになりやしないかと心配されるが、三笘はこのボーンマス戦でもフル出場を果たすことになった。

 立ち上がりは沈黙していた。なかなかボールが回ってこなかった。アウェーのピッチで、初めて三笘らしいウイングプレーを挨拶代わりのように見せたのは、前半23分だった。

ボーンマス戦にフル出場、先制ゴールをアシストした三笘薫(ブライトン)ボーンマス戦にフル出場、先制ゴールをアシストした三笘薫(ブライトン)この記事に関連する写真を見る 左の高い位置で仕掛けたドリブルは、相手DFにクリアされるが、ドイツ人MFパスカル・グロスが蹴ったショートコーナーを再び受けた瞬間である。対峙する右サイドバック(SB)アダム・スミスを、鋭角の深々とした、舞うような切り返しで置き去りにした。

 それはまさに絵になる華々しいアクションだった。アウェーのスタンドを埋めた地元ファンの目を釘付けにする力があった。敵ながらあっぱれと脱帽させる力、劣等感を抱かせる力さえある。失点シーンにも匹敵するショッキングな光景として記憶されるプレーだった。ブライトンに先制ゴールが生まれたのはその4分後だった。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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