久保建英が「感動的」なプレーで絶賛されるもフル出場ならず。「理解できない」交代はなぜ起こってしまったのか (2ページ目)
【エースの起用法に苦労するソシエダ指揮官】
敵陣での守備イコール攻撃、というコンセプトなのだろう。
後半に入って、久保は攻撃のテンポを上げた。右サイドでミケル・メリーノのボールを受けると、かつてのチームメイトであるアルフォンソ・ペドラサと対峙しながら、中に切り込み左足でシュートを放ってバーをかすめた。その後も、右サイドでペドラサと1対1になると、バックラインを押し下げながら、その前に流すようにクロスを入れ、メリーノの絶好機を作った。
久保は完全にボールを支配下に置けるために、マーカーを不用意に飛び込ませない。また、キックモーションが速いため、次のプレーを読み取らせず、自分の間合いでプレーできる。左に流れ、アルゼンチン代表ファン・フォイトと対峙した時も、相手が力任せに突っ込んでくるところ、居合抜きのように入れ替わってファウルをもらっている。
三笘薫のような爆発的なドリブルではない。しかしコンビネーションでさまざまな選択肢を持ち、相手を幻惑する。間合いが絶妙なのだ。
久保の存在で、ラ・レアルは攻撃全体の流れを得ていた。彼が縦パスを引き出し、そこから展開するだけで、押し込んだ。シルバとともに、詰まったところを打開する技術も卓越しており、仕掛ける脅威も与えていた。
それだけに、70分での交代は悔やまれる。
同じ時間に代わりに入ったふたりの左利きアタッカー、ミケル・オヤルサバル、モハメド・アリ・チョは、いずれもそれぞれのパスミスが失点の契機になっている。それほど、試合の流れには乗れていなかった。むしろ、チームはパワーダウン。どちらもケガからの復帰組だけに試合勘の欠如は否めず、2失点で敗れる結果を招いた。
名将アルグアシル監督も、エースであるオヤルサバルの使い方には苦労しているのだろう。今のオヤルサバルが本調子でないのは明らか。しかし生え抜きのワンクラブマンだけに、ラ・レアルの過去と未来を背負うことも考慮し、プレーさせることによってコンディションを上げる作業もしなければならない。周囲の無言の圧力は相当なもので、どこで折り合いをつけるか。
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