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イタリアにユーロ優勝をもたらした友情。最期にヴィアリがマンチーニに託した言葉とは (4ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by REX/AFLO

【マンチーニが明かしたヴィアリとのやりとり】

 2022年の11月に、サンプドリア優勝から30年を記念して作られたドキュメンタリー映画が公開された。タイトルは『La bella stagione(麗しきシーズン)』。スクデットを勝ち取った1990-1991シーズンを、当時の選手たちのコメントをまじえながら追ったものだ。この映画の試写会がジェノヴァで開かれ、久しぶりにかつてのサンプドリアの優勝メンバーが一堂に会した。

 この頃、ヴィアリはがんが再発し、代表スタッフも退き、治療に専念することを決心していた。かなり痩せてしまっていたが、ヴィアリはそれでもジェノヴァにやって来た。彼の愛する仲間に、多くの思い出の詰まるこの町に会えるのは、もしかしたらこれが最後という思いがあったのかもしれない。

 ヴィアリとマンチーニが最後に会ったのは12月の末だった。マンチーニがロンドンの病院に見舞いに行った。この頃はすでにヴィアリはベッドから起き上がれなくなっていた。

「本当は彼に会うのが怖かった。いったい、どんな顔をして会ったらいいのか」

 ヴィアリが1月6日に急逝してから沈黙を守っていたマンチーニは、一週間後、初めてテレビのトーク番組でその日の様子を語った。ヴィアリは昔と同じようにマンチーニを迎えてくれたという。声こそ少ししゃがれていたが、かつてのように冗談を飛ばし、一緒に元チームメイトのアッティーロ・ロンバルドに電話をして、彼をからかった。

「結局、見舞いに行った私のほうが、勇気づけられてしまった」

 マンチーニはそう言う。ヴィアリは今の代表が気になっていた様子で、マンチーニにチームについて、選手について山のような質問したという。病室を去る前に、彼はマンチーニに言ったそうだ。

「2026年のW杯は、必ず勝たなくちゃいけない」

 マンチーニが約束すると、彼はこう続けた。

「俺が必ずそばにいるから」

 カタールW杯を逃したイタリア代表は、3月から再稼働する。まずはヨーロッパ選手権の予選だ。イタリアにとって、そしてマンチーニとその仲間たちにとって、決して負けられない戦いが始まる。

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