カタールW杯の優勝は? エムパベの生かし方は前回大会より上でフランス優勢も、アルゼンチンにメッシ人気で「ホームの利」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【サポーターの数はアルゼンチンが圧倒】

 4-2-3-1を堅持し、ポジションワークを保ちバランスにこだわりながらプレーするフランス。穴がないのである。メッシが穴になる可能性を秘めるアルゼンチンとの違いでもある。

 実力的には3-1でフランスと見る。両者間には1.5点~2点ぐらいの差がある。4-3という、スコア的には大接戦に見えた前回の一戦も、同程度の差を感じたものだ。

 それが競った試合になった理由はサポーターの数の差だ。カザンに駆けつけた両軍ファンは、アルゼンチン10に対しフランス1。フランスファンはこちらが心配になるほど少なかった。今回もその傾向に変わりはない。準決勝モロッコ戦でもフランスのファンは少なかった。モロッコファン10に対しフランス1だった。

 一方、アルゼンチンサポーターの姿は目立つ。準々決勝のオランダ戦は、オレンジ1に対しアルゼンチンは10だった。準決勝のクロアチア戦は3対10。勝敗を分けたポイントと見る。

 決勝の舞台となる約9万人を収容する巨大スタジアムは、文字通りすり鉢状になっていて、サポーターの声援はスタンド内に激しく反響する。筆者は、ともに同じルサイルで行なわれたクロアチア戦、オランダ戦で体験済みだ。アルゼンチンのホーム色が強く反映された舞台になるはずだ。その半分以上は、アルゼンチン本国からやってきたアルゼンチン人ではない。地元のカタール人、およびドーハを訪れているアラビア語を話す観光客だ。彼らのメッシ人気は凄まじい。

 母親がアラビア語圏のアルジェリア出身のエムバペのほうが、人気は高いのではないかいうこちらの見立ては誤っていた。メッシ人気、恐るべし。それを痛感している毎日だ。

 実力ではフランスがアルゼンチンを上回るとみるが、スタンドのホーム色が、その差を幾ばくか補うのではないか。4年半前、カザンで見た一戦が筆者の脳裏をよぎるのである。

【著者プロフィール】杉山茂樹(すぎやま・しげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

★中村俊輔選手との鼎談全文(合計33ページ)収録★
↓↓↓↓↓↓↓↓
webスポルティーバの大人気対談
「中村憲剛×佐藤寿人 日本サッカー向上委員会」が一冊の本になった!

 書籍名は「ケンゴとヒサト サッカー人生以外も役に立つサッカーの話」

 ふたりが願う「日本サッカーのさらなる向上」を実現するため、さまざまなテーマに沿って対談形式で本音をぶつけあう。また、カタールワールドカップ直前企画として「ふたりの思い出のワールドカップこぼれ話」、さらにはふたりが熱望した元日本代表MF中村俊輔選手を招いて豪華な「スペシャル鼎談」も収録。プロとして20年近く現役を続けられたふたりの言葉は、「サッカー以外の人生」にもきっと役に立つ。

<中村憲剛さんからのコメント>
「長く第一線でやれたのには理由があります。その要因を紐解くことは、サッカーだけではなく、おそらくサッカー以外の社会や組織にも当てはまること。その『ヒント』になるようなものが、この本には詰められていると思います」

<佐藤寿人さんからのコメント>
「僕らはスポーツの世界で経験してきたことを話していますけど、それをうまく変換して『自分事』として捉えていただき、それぞれの環境で生かしてもらえたら。サッカーをやってきたなかで学んだことは、人生にも役立つんです」

【書籍名】 ケンゴとヒサト サッカー人生以外も役に立つサッカーの話
【発 行】 集英社
【発 売】 2022年11月14日(月)
【定 価】 本体1,700円+税

◆ご予約はこちらから>> 「集英社・書籍案内」 「Amazon」 「楽天ブックス」


【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る