カタールW杯の優勝は? エムパベの生かし方は前回大会より上でフランス優勢も、アルゼンチンにメッシ人気で「ホームの利」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【フランスの中心はグリーズマン】

 チームのバランスもその分、よくなった。相手ボール時に穴ができにくくなっている。これまでの6試合を通して、メッシとその周辺のバランスは試合ごとによくなっている。決勝に向けて好材料である。

 アルゼンチン対フランス。直近の対戦は4年半前、カザンで行なわれたロシアW杯決勝トーナメント1回戦だ。スコアは4-3。フランスが撃ち合いを制した一戦である。現在も主力として残っているのはアルゼンチンがメッシ、ニコラス・オタメンディ、ニコラス・タリアフィコの3人であるのに対し、フランスはキリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマン、オリビエ・ジルー、ラファエル・バラン、ウーゴ・ロリスの5人だ。アタッカーに目を転じればその関係は1対3になる。アルゼンチンがメッシひとりなのに対し、フランスは4-2-3-1の前4人のうち3人が健在だ。

 だが、サッカーの中身は4年半前とかなり変わっている。前回は攻撃がエムバペの推進力に頼る傾向があったが、今回は4-2-3-1の3の左にきれいに収まっている。新しく加わったウスマン・デンベレとエムバペが大きく開いて構える左右両ウイングを形成。その真ん中の広いエリアでグリーズマンがパッサーとして展開力を発揮するサッカーだ。

 エムバペ対メッシ。見出しはそうなりがちだが、今回4-2-3-1の1トップ下がハマり役になっているグリーズマンをどう止めるかが、アルゼンチンには重要な問題になる。中心はグリーズマン。エムバペはあくまでも脇役だ。

 それでいながらエムバペはこれまで5ゴールを挙げ、メッシと得点ランク1位の座に並んでいる。そうした意味でアルゼンチンより多彩だ。大きな左右の展開で相手の目を驚かせておき、そのうえにエムバペのスピードが加わるという感じ。引き合いに出したくないが、縦方向しかなく、非立体的な動きになりがちな日本のスピード系アタッカーとの違いでもある。エムバペというスピード系選手の生かし方に、前回より細工が利いている。

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