クロアチア戦に向け、チッチ監督は日本に感謝。26人全員起用&ネイマール復帰のブラジルに死角はあるか (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【韓国戦はネイマールのウォーミングアップ?】

 ブラジルのプレーを楽しみにしてくれている人たちが、世界には大勢いるはずだ。なかにはなけなしの金をはたいて、この試合を見に来てくれていた人がいたかもしれない。そういう人たちに対しても、ブラジルの戦い方は失礼であったと思う。

 それにしてもネイマールがいるのといないのでは、ブラジルはまるで違った。メッシ依存症のアルゼンチンと違い、ブラジルはついにネイマール依存から脱却したと思っていたが、どうやらそれは私の思い違いだったようだ。

 ネイマールの復帰は明らかにチームに多彩さと活気をもたらした。選手層の厚い今のブラジルには、ネイマールのポジションでプレーできる代わりの選手は数多くいる。しかし本当にネイマールの代わりができる選手はひとりもいない。ネイマールにボールが渡れば、予想以上の何か特別なことをしでかしてくれるのだ。

 退屈な韓国戦の後半を見ながら私は思った。これはネイマールの調子を上げるための試合でもある、と。これから始まるガチンコ勝負に備えての練習なのだ、と。私としてはやはりそのやり方に同意はできないが。

 もうひとつ私が気に入らなかったのはブラジルがゴールした時のパフォーマンスだ。リシャルリソンはゴールを決めると、彼のニックネームでもある鳩の動きを模した「ポンボ・ダンス」を披露する。ゴールして嬉しいのはわかる。喜んで全然構わない。しかし、ベンチの選手や監督まで巻き込んでやったのは少しやりすぎだった気がする。試合後ならまだしも、まだプレー中なのだ。

 案の定、各方面から批判が飛んできた。チッチ監督は「韓国に対しリスペクトがないわけではない。選手のためにやった」と述べているが、さすがにもう一度やってくれと請われた時は、やらなかった。

 今、ブラジルのチーム内の雰囲気は最高だ。それはチームの26人の選手全員がプレーしていることにも起因する。韓国戦の後半35分、チッチ監督は第3GKのウェベルトンを投入。これでブラジルは今大会で唯一、全員がピッチに立ったチームとなった。W杯で26人の選手を起用したのは新記録だ(これまでの登録選手数が23人だったため)。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る