クロアチア戦に向け、チッチ監督は日本に感謝。26人全員起用&ネイマール復帰のブラジルに死角はあるか

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 カタールW杯決勝トーナメント1回戦。韓国戦のブラジルをなんと評価したらいいだろう。最初の36分間のブラジルは最高だった。ブラジルのサッカーがすべて詰まっていた。ジョゴ・ボニート(美しいプレー)、たくさんのゴール、明るく陽気な雰囲気......。スタンドにいた外国人記者やサポーターも思わず乗り出す楽しさだった。36分で4ゴール、まさにゴールの嵐だった。このままいったらいったい何ゴール入るのだろうか。

 しかし、4点目を決めたところでブラジルはプレーをすることを止めてしまった。その落差はあまりにも顕著だった。

 ハーフタイムに入り、私は近くにいたマウロ・シウバに聞いた。いったいセレソンに何が起こったのか、と。彼は1994年アメリカW杯の優勝メンバーでもある。彼は言った。

「まあ、落ち着いて。もう勝ちは決まりだから、次の試合のために力を温存してるのさ」

 私は納得できなかった。

「でも、こんなにあからさまに気を抜いたプレーをするのはよくない。これはW杯なんだから」

 だが、15年以上セレソンでプレーしてきたジュニオールも口をそろえる。

「エンジンを止めただけさ。ごく普通のことだよ」

韓国戦でケガから復帰したブラジル代表のネイマール photo by AP/AFLO韓国戦でケガから復帰したブラジル代表のネイマール photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る 後半のブラジルは、もっと露骨に無責任で気のないプレーを始めた。本当に退屈な試合で、私の隣りの記者は居眠りをしていたくらいだ。韓国はゴールを返そうと必死だったが、彼らはブラジルよりも、とてつもなく疲れていた。ブラジルのほうがグループリーグ3戦目を1日早くプレーしていたが、それだけが理由ではない。

 ブラジルはすでに勝ち抜けが決まっていたカメルーン戦を、ほぼリザーブの選手でプレーした。つまりブラジルの主力選手には1週間のインターバルがあり、ネイマールに至っては(ケガをしたため)12日間の休息期間があった。一方、韓国は3日前にポルトガルと死闘を繰り広げた末に勝利し、決勝トーナメント進出を勝ち取っている。体力的にも大きな差があっただろう。

 私はこのブラジルのやり方が気に入らなかった。ブラジルは自分たちがやる気を出せばなんでもできると思い込んでいる。それがカメルーン戦の敗戦にもつながったと思う。韓国戦でも後半はミスが多く、ペク・スンホのゴールシーンでは誰も彼をマークしていなかった。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る