カタールW杯でブレイク期待のブラジル代表ヴィニシウス。風間八宏が「劇的に成長している」と見る一番の理由はなにか (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

一番の変化は技術の精度

 確かに左サイドでヴィニシウスがボールを持った時は、次にどんなプレーを見せてくれるのか、見る者をワクワクさせる雰囲気を漂わせる。一昨シーズンまでは、その後にファンをガッカリさせたこともあったが、現在は期待以上のプレーで見る者に歓喜をもたらせてくれる実力とスター性が備わってきた。

 では、ブレイク前と後ではヴィニシウスの何が違っているのか。風間氏が、その違いと進化のポイントを解説してくれた。

「ゴールを決める力、周りとのコンビネーション、プレーを選択する時の判断力など、すべてにおいて劇的な成長を遂げていると思いますが、そのための一番の源になっているのは、技術の精度が高まったことだと思います。

 以前のヴィニシウスは、ドリブルをする時にボールが自分の真ん中の位置からずれてしまい、武器である速さを生かしきれていませんでした。また、ドリブルで相手を抜き去る時も、走る速さで相手と勝負しようとしていましたが、現在は競争することなく、正確な技術によって速さを生み出し、複数のドリブルを使い分けます。要するに、ボールを動かして相手を操れるようになったので、競争する必要がないんです。

 また、決定力が上がった理由も同じで、キックの精度が高まったのが大きな要因でしょう。キックの技術が上がれば、シュートを狙う時の自信につながるので、チャンスの時も慌てません。

 周りの選手たちと絡む時も、技術が追いついてきたことで、(カリム・)ベンゼマや(ルカ・)モドリッチとコンビネーションプレーをしても、彼らのスピードに合わせられるようになりました。それによって、プレーの選択肢が増えただけでなく、選択するための判断力を成長させることにもつながりました。

 技術力を磨いて正確にプレーできるようになるのが、いかに大切なのか。ヴィニシウスの成長を見ても、そのことがよくわかると思います」

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