カタールW杯の優勝候補が恐れる「ジャアント・キラー」デンマーク代表。世界の舞台で番狂わせを起こし続けた歴史とその理由 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

堅守も速攻もレベルが高い

 基本的には堅守速攻型。骨太で球際に強いタイプが標準型と多数派を占めている。それが堅実な守備のベースになっている。一方で、ラウドルップ兄弟やデニス・ロンメダール、クリスティアン・エリクセンのような飛びきりの技巧派も、数は少ないが常に存在していて、彼らが担う速攻のキレ味が異様に鋭い。

 ただ守ってカウンターというのではなく、堅守も速攻もレベルが高い。それが守勢に立たされる対強豪国との戦いで強みになっていて、精神的な強さが後押ししてくれるということなのではないだろうか。

 2021年に開催されたユーロ2020、初戦のフィンランド戦でエースのエリクセンが心臓発作で試合中に倒れるアクシデントがあった。その時の応急処置や、テレビカメラからエリクセンを守るために選手が壁になって囲むなど、冷静で適切な行動が称賛された。

 その後、ベスト4まで進むという逆境での強さもデンマークらしい。1984年の欧州選手権の時も、最初のフランス戦でエースのシモンセンが骨折というアクシデントがあったが、それを乗り越えてのベスト4だった。優勝した1992年は代替出場。ハプニングに強い不思議な体質を持っているようだ。

デンマーク代表の主要メンバーデンマーク代表の主要メンバーこの記事に関連する写真を見る カタールW杯に臨むチームの中心は、復活したエリクセンだ。正確無比なパスとフィールドを俯瞰する視野、生死の境から生還したせいかどこか達観しているような悠々としたプレーぶりである。

 注目は22歳のアンドレアス・スコフ・オルセン。これがラウドルップそっくりなのだ。ラウドルップ兄弟は兄弟なのでミカエルとブライアンがそっくりだったが、彼らの父親のフィン・ラウドルップも代表選手だった。映像を見ると、これまた息子たちとそっくり。

 ラウドルップ家とスコフ・オルセンに縁戚関係はないようだが、姿もプレーぶりもよく似ている。他の武骨な選手たちとは明らかに違うので、デンマークによくいるタイプではなさそうだが、少数ながら一定数いるタイプなのかもしれない。ボールタッチが抜群でアイデアがあり、スピードもすばらしい。

 GKカスパー・シュマイケルも定評のある名手だ。こちらは正真正銘ピーター・シュマイケルの息子なので当然よく似ている。ユーロ2020で活躍したMFミッケル・ダムスゴーもいる。堅実で安定感抜群のMFピエール=エミール・ホイビュア、ベテランCBシモン・ケアと、アンドレアス・クリステンセンもいる。

 カタールW杯のグループDでは、フランス、チュニジア、オーストラリアと同居。シード国が相性のいいフランスなのは、悪くない組み合わせかもしれない。波乱を起こす候補筆頭というところだろうか。

◆【画像】デンマークほか、カタールW杯注目チームのフォーメーション

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る