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弱小スペイン代表に風が吹き始めた。クラブチームが牽引して攻撃サッカーの旗頭に (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

ベスト4の壁を破れない

 1988年の欧州選手権(西ドイツ大会)でも、8チームが出場する本大会に駒を進めたが、グループリーグで西ドイツ、イタリアの後塵を拝し、ベスト4入りを逃している。

 フランクフルトで対戦したイタリアとの一戦は0-1のスコアどおり、競った内容の惜しい敗戦だったが、ゲルゼンキルヘンで対戦した西ドイツ戦(2-0)では、強靱な身体能力とゲルマン魂を誇る相手に、なすすべもなく敗れた。文字どおりの完敗劇だった。

 その20年後、ウィーンのエルンスト・ハッペルで行なわれたユーロ2008決勝で、スペインはドイツに完勝している。1-0という最少スコア差ながら、順当な勝利だった。そのさらに2年後の2010年南アフリカW杯、ダーバンで行なわれた準決勝でも同様に、スペインはドイツに、1-0ながら正統性の高い勝利を飾っている。1988年欧州選手権当時は、とても想像できなかったことである。

 当時のスペインは、西ドイツに何度戦っても勝てそうもないと思わせる、なんとも言えない貧弱さを露呈させていた。あるレベルは維持していたが、欧州のトップレベルに君臨しているわけではなかった。

 スペイン国内では論争が巻き起こった。守備的に戦ったほうがいいのではないか。攻撃的に行っても、欧州では勝てないのではないか。サッカーの方向性について、白熱した論争が展開された。そうしたなかで支持されたのは、1988-89シーズンにバルサの監督に就任したヨハン・クライフの「勝てなくてもいいから攻撃的に」だった。
 
 1990年イタリアW杯はグループリーグを首位で抜け、決勝トーナメント1回戦でイビチャ・オシム監督率いるユーゴスラビアに延長で敗れている。1992年の欧州選手権は本大会に進めず。1994年のアメリカW杯は準々決勝でイタリアに1-2と惜敗。1996年欧州選手権もイングランドに準々決勝でPK負けを喫する。国際大会でベスト4の壁を破れずにいた。

決して強豪国とは言えない時代もスペイン代表を支えたラウル・ゴンサレス決して強豪国とは言えない時代もスペイン代表を支えたラウル・ゴンサレスこの記事に関連する写真を見る 1998年フランスW杯では、開幕する20日前、アムステルダムで行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)決勝で、レアル・マドリードがユベントスを破り、32シーズンぶりの優勝を飾る。するとその影響でスペインの前評判も高まりを見せた。

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