逆境体質のアトレティコ。堅守をベースに攻撃シフトも自在なスタイルは、CLこそ威力を発揮する (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【堅固な5バック】

 アトレティコの基本フォーメーションは3-5-2または3-4-2-1。それまでのベースだった4-4-2も持っているが、力の均衡した相手には3バック(5バック)で隙を見せない戦い方をする。

 GKは不動のヤン・オブラク。3バックはホセ・マリア・ヒメネス、マリオ・エルモソにシメ・ブルサリコ、ステファン・サビッチ、フェリペの誰かを組み合わせる。両サイドはウイングバックとしてレナン・ロディ、ヤニック・カラスコ。マルチなマルコス・ジョレンテがここに入ることもある。

 MFは中央にコケ、ロドリゴ・デ・パウルの2ボランチか、トマ・ルマールを加えた3人という選択。FWにルイス・スアレスとアントワーヌ・グリーズマンの2人。ジョアン・フェリックスまたはアンヘル・コレアを加えた1トップ+2シャドーもある。

 守備は5バックで構えて、ウイングバックが前へ出ていく形。ボランチは2枚にせよ3枚にせよ、あまりサイドに引っ張り出されないようにしている。3バックとボランチでまず中央を固める手堅い守り方だ。

 個々の寄せきる能力、球際の強さ、カバーリングの的確さといった守備の作法が叩き込まれていて、これはシメオネ監督下のアトレティコの特徴になっている。5バックによって、いわゆる「ポケット」「ニアゾーン」と呼ばれるエリアへの進入を許さないのは昨季リーグ優勝のポイントだった。

 アトレティコの撤退守備は中央が強固なので、相手はサイドへ迂回して個人技で破るか、ポケットへ進入するという攻め手になるが、アトレティコはどちらも容易にやらせない。

 守備は相変わらず固いはずなのだ。ただ、これは撤退した時の固さであって、攻撃へ比重を置けばそれなりに失点もする。むしろ問題は攻撃の効率の悪さだろう。

 スアレスを最前線に固定しているので、ボールを前進させるためにライン間でパスを受けるのはグリーズマンやジョアン・フェリックスの役割になっている。ここの収まり自体は悪くないのだが、そこからサイドへ展開して長めのクロスボールというアプローチが多く、シンプルすぎて中央の固い守備にはあまり効果がない。

 カラスコが強引にドリブルでこじ開けた時が、最大のチャンスになっている。しかし、カラスコは守備が強固なタイプではなく諸刃の剣であり、このあたりのジレンマがそのまま攻守の中途半端さに表れている感じである。

 しかし、CLは様相が違う。割りきった戦い方がしやすく、そこにアトレティコの活路もありそうなのだ。

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