逆境体質のアトレティコ。堅守をベースに攻撃シフトも自在なスタイルは、CLこそ威力を発揮する (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【逆境体質】

 第22節のバレンシア戦。ホームのアトレティコは3-5-2の堅守型のシステムながら、ホームなので攻めに出るという中途半端なスタート。前半のうちに2点を奪われた。

 ここでシメオネ監督は3-4-2-1にシフト、さらにスアレスとマテウス・クーニャの2トップによる4-4-2に変え、カラスコとコレアを両翼に配する4トップに近い最大限の攻撃出力をかける。

 64分にCKからクーニャが1点を返すと、アディショナルタイムの91分にカラスコの鋭いクロスからコレアの同点ゴール。さらに93分にエルモソが決める大逆転勝利を収めた。

 後半のアトレティコは目に見えて勢いを増していった。何か特別なことをしたわけではない。2点ビハインドをひっくり返すために、次々と攻撃の選手を投入し、システムを変えただけだ。やるべきことをやっただけなのだが、そこに迷いが全くなかった。

 0-2にされた、内容もよくない。その時に「どうしよう」ではなく、打つべき手を打っていった。選手たちも微塵も諦めを見せず、1点返した時点でワンダ・メトロポリターノ全体が勝利を確信したような雰囲気になっている。

 アトレティコは逆境に強い。というより逆境体質である。追い込まれても平然と受け止め、そこから這い上がる努力を止めない。その姿勢、スピリットをファンと共有している。

 もう勝つか負けるかの問題ではなく、人生にどう立ち向かうかという話で、その決意を皆で高らかに歌い上げる。そして、このスイッチが入った時のアトレティコは強い。

 自分たちは弱いという自覚のもとに非常に強くなる。困難に直面するほど力を出す。CLではここからすべての試合が逆境だろう。しかし、それこそアトレティコにとっておあつらえ向きなのだ。

◆【図】2021-22シーズン中間地点 欧州トップ10クラブフォーメーション

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