試合中、ぼんやり歩いていたメッシ。アルゼンチンの限界を世界が見た (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 繰り返すが、クロアチアはすばらしいサッカーをした。「前半は守備ブロックを作り、後半は高い位置からのプレスをかける。コンパクトで組織的なサッカーができた。アルゼンチンが混乱したのではない。我々が素晴らしかったのだ」と自画自賛をためらわなかったのは、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督だ。加えて、「だが、重要だったのは戦術よりも、選手をストレスから解放させ、楽しんでプレーさせてやることだった」とは、なかなかニクいセリフである。

 しかし、1点を失ったことで泡を食ったように攻め急ぐアルゼンチンの選手たちは、焦りと苛立ちに満ち溢れていた。案の定、失点を重ね、しまいには無用なラフプレーを連発。あらゆる意味において、まさにアルゼンチンの自滅だった。

 これでアルゼンチンは、自力でのグループリーグ突破の可能性が消えた。第3戦でナイジェリアに勝利したうえで、同じ時間に行なわれるクロアチア対アイスランドの結果を待つことになる。前回大会のファイナリストが置かれた状況は厳しい。

 サンパオリ監督は、チリ代表などで非常にアグレッシブなサッカー――チーム全体で高い位置からプレスを仕掛け、奪ったボールを一気にゴールへ向かって運ぶ――を構築し、結果を残してきた名将である。だが、メッシを擁するアルゼンチンでは同じことができず、最適解を見つけられないまま、ここまでに至った。

 そして今、"戦術はメッシ"であることの限界を、当のメッシ自身も認めたのかもしれない。成すすべなく失点を重ねた末の優勝候補の大敗は、そんなことを感じさせる試合だった。

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