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【フランス】ようやくスウェーデン人に「なった」イブラヒモビッチ (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 次にイブラヒモビッチが口を開いた。彼はチームメイトに活を入れ、国のために立ち上がるときだと呼びかけた。しかし後半11分、スウェーデンはさらに追加点を決められ、勝負は決まったかにみえた。

 それでも後半17分、イブラヒモビッチがヘディングで1点を返す。彼はゴールを決めた後、ボールを抱えてセンタースポットに走った。ハリウッド映画でもそうだが、ヒーローだけは自分を信じることができる。

 実にスウェーデンは3-4まで巻き返した。残り5分となったところで、やはり移民の息子で代表初出場のトビアス・サナが、がら空きのゴールを前にシュートをふかしてしまう。チームメイトのキム・シェルストレームがサナのもとへ走っていき、何かどなる。サナもものすごい形相で言い返す。

 サナがミスしたとき、イブラヒモビッチは彼の後ろにいた。サナがシュートを譲っていれば、イブラヒモビッチがゴールを決められただろう。だがイブラヒモビッチは何も言わず、サナの胸を軽くたたき、肩をギュッとつかんだ。

 ロスタイムに入って3分、スウェーデンは同点に追い着いた。ドイツを相手に0-4からドローに持ち込んだチームはなかった。

 イブラヒモビッチは偉大なフットボール選手になっただけではない。彼は同じくらい難しいことをやってのけた。彼はスウェーデン人になったのだ。

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