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【フランス】ようやくスウェーデン人に「なった」イブラヒモビッチ (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 イブラヒモビッチはパリではいささか高慢にみえる。理由はわからなくもない。なにしろ彼は2011年まで8シーズン連続で(しかも3つの国で)リーグタイトルを獲得している。パリ・サンジェルマンが今まで獲得したリーグタイトルより6つも多い。今シーズンは最初の10試合で10ゴールを決めた。

 ゴール、X-box、ホテル・ブリストル......全部ひっくるめて、イブラヒモビッチはパリが大好きだ。ここでチャンピオンズリーグを獲得する可能性も見えているかもしれない。だが彼の心の中で、フランスは脇道のような場所でしかないだろう。

 というのもイブラヒモビッチは、「スウェーデン人」になるための長い旅を終えようとしているからだ。まず彼は、11歳年上の中流のスウェーデン人のブロンド女性と結婚した。ふたりはマルメに豪邸を買った。イブラヒモビッチは家の壁に自分の足の写真を飾っている。この足がすべての金を生み出した。

 彼はジェリング賞も手にした。スウェーデンで最も人気のあるスポーツ選手に贈られる賞で、たいていは金髪のスキー選手が獲得する。この賞に決まったときに涙がこぼれたことには、イブラヒモビッチ自身が驚いた。「きっと本当に受け入れてもらえた証に思えたんだ。フットボール選手としてだけじゃなく、人間として」

 今、イブラヒモビッチはスウェーデン代表のキャプテンを務めている。10月にワールドカップ予選をドイツとアウェーで戦ったとき、前半を終えたところでスウェーデンは0-3でリードされていた。スウェーデンの監督エリク・ハムレンはロッカールームで選手たちに「この試合はもう仕方ない。後半に少しでも意地を見せようじゃないか」という意味のことを言った。

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