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サッカー天皇杯は連覇が非常に難しい大会 その歴史のなか5大会連続で決勝を戦ったチームがある

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

連載第77回 
サッカー観戦7500試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」

 現場観戦7500試合を達成したベテランサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。

 今年の天皇杯はFC町田ゼルビアが初優勝。ヴィッセル神戸は昨年からの連覇を逃した。実力伯仲のチームが多い日本においてトーナメント戦である天皇杯の連覇は非常に難しいと言われていて、今回はその歴史を紹介します。

【カップ戦に強い町田と神戸】

「迷信」......。

 第105回天皇杯全日本選手権決勝で勝利してFC町田ゼルビアに初タイトルをもたらした黒田剛監督は、直後の監督記者会見で「迷信」という言葉を使った。

第105回天皇杯で優勝したFC町田ゼルビア photo by Kishiku Torao第105回天皇杯で優勝したFC町田ゼルビア photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る 青森山田高校監督として国立競技場での決勝を何度も経験してきた黒田監督は、試合前、選手たちに「決勝では15分までに何かが起きる」と伝えたのだという。「選手たちはそれを信じて戦ってくれた。それが6分の先制ゴールにつながった」と黒田監督。

 勝利監督なのだから、その「黒田節」を滔々(とうとう)と展開してもよい場面なのだが、そこで「迷信かもしれないが」とバランスを取ってみせるのがこの指導者の面白いところだ。

「国立には魔物が棲んでいる」という言葉にも触れた。

 たしかに、こうした言説はある種の「迷信」なのだろう。

 決勝戦でそうした事象が発生すると人々は「ああ、やっぱり決勝戦の国立は......」と思い、それが二度、三度と繰り返されると記憶は強化されていく。そして、何事も起こらなかった試合の記憶は忘れ去られる......。

 こうして、「迷信」が生まれるのだ。

 つまり、「決勝戦では......」的な言説は科学的、統計学的根拠などない「迷信」なのかもしれない。だが、その言説を人々が(とくに当事者である選手たちが)本気で信じていたとしたら、それが彼らのパフォーマンスに影響を与えるのではないか。

 いずれにしても、町田の選手たちは試合開始直後から非常に集中していた。「決勝」を何度も経験してきた黒田監督らしい「人心掌握術」の効果だったのだろう。ノックアウト式トーナメントに慣れており、勝利至上主義を否定しない黒田監督がいる限り、町田はこれからもカップ戦に強いチームであり続けそうだ。

 一方、「堅守速攻」を掲げるヴィッセル神戸もカップ戦向きのチームと言える。昨年に続いて2年連続で決勝。2019年大会の優勝を含めて、過去7大会で3度も決勝に進出しているのだ。

 吉田孝行監督は、カップ戦では思いきったターンオーバーを実施する。リーグ戦とはまったく違うメンバーを起用しながら勝ち上がってくるのはたいしたものだ。そのあたりの手腕も含めて、神戸もカップ戦に強いチームのひとつなのは間違いない。

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著者プロフィール

  • 後藤健生

    後藤健生 (ごとう・たけお)

    1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7500試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。

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