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【Jリーグ】佐藤寿人は森保監督の言葉で原点を見つめ直した「ストライカーの責任から逃げていた」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【陰のMVPは35歳の大ベテラン】

 特に印象的だったのは、17節の磐田戦でした。

 勝負の世界では、アクシデントが起きた時にこそ、真価が問われると思います。悪いほうに行くのか、いい方向に持っていけるか。優勝するようなチームには、間違いなく後者の力が備わっているはずです。

 この磐田戦が、まさにそうでした。開始早々にミキッチが負傷交代して、スコアレスで迎えた71分にはトシ(青山敏弘)も腰を痛めてプレーできなくなってしまいました。

 主力ふたりがいなくなったなか、トシに代わってピッチに立ったのはナカジ(中島浩司)さんでした。

 ナカジさんは前の年に30試合以上出ている主力でしたが、この年は千葉(和彦)ちゃんが入ったことで、まったく試合に出られなくなったんです。ベンチには入っていましたが、ピッチに立ったのはこの磐田戦までに、わずかに1試合だけでした。

 試合勘がほとんどない状態でナカジさんが緊急出場したわけですけど、ピッチに立ってからわずか5分後に先制点を決めてくれたんです。あの瞬間は鳥肌が立ちましたね。

 常に出ている選手が活躍するのは当たり前ですけど、ふだん出ていない選手が限られた時間で結果を出すのは本当にすごいこと。チーム最年長の35歳がチームを救ってくれたこの試合は、大きなターニングポイントだったと思います。

 結局、ナカジさんはこの磐田戦を最後に、試合に出ることはなかったんですよ。その意味でもこのゴールの価値は高かったと思いますし、個人的にはナカジさんが陰のMVPだと今でも思っています。

 シーズン後半戦に入ると、広島、仙台、浦和の3チームが優勝を争う構図になりました。そのなかで迎えた22節の仙台との直接対決が、優勝への分水嶺となりました。

 僕たちは前節に磐田に引き分け、2位に転落し、仙台は川崎に勝って再び首位に立ちました。1ポイント差で追いかける状況で、勝てば首位の座を奪還できる一方、負ければ4ポイント差に広げられてしまう重要な一戦でした。

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