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J1リーグの過半数が3バック採用 京都サンガの「守備固め」常態化にも違和感 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Yamazoe Toshio

【「守備固めをして失点」は救いがない】

 筆者は、「うしろを固める」から「前方への圧力を強める」に変化していく過程を現地で目の当たりにしてきた。日本人ライターの目に、その姿はカルチャーショックとして刻み込まれることになった。たとえば、疲れの見えたウイングの交代相手にサイドバックを選択。サイドでサイドバック2枚が縦関係を築く姿などは、その代表的な例になる。

 選手交代が3人から5人に増えたこともその傾向に拍車を掛ける。たとえば4-2-3-1のチームは、アタッカー4人を高確率で交代させるが、その背景に潜むのは高い位置からのプレッシャーをかけ続けようとする攻撃的精神である。

 うしろを固めるサッカーを完全に否定するつもりはないが、サッカーが進化してきた経緯を踏まえれば、それに逆行する采配であることは確かだ。進歩的なサッカーの間隙を突いて勝利をかっさらおうとする、少々、小狡いサッカーに見える。

 欧州の監督や指導者、あるいは評論家らから話を聞くなかで、なるほど、と妙に納得したのは「敗れたときに救いがない」とする意見だ。後方に多くの人員を割き、守備的にしたにもかかわらず失点すれば、それは守備的固めになっていないことを意味する。論理的に破綻した采配になる。

 京都で言えば、神戸戦がそれに当たる。その監督采配は、突っ込みどころ満載だった。だが、メディアがそこを叩くことはない。テレビ解説者も何も言わない。5バックへの変更を当たり前のことだと肯定する。

 想起するのは一昨年のJ1昇格プレーオフだ。清水エスパルスと東京ヴェルディが国立競技場で戦った一戦である。先制した清水の秋葉忠宏監督は、同点にされれば昇格できないレギュレーションであるにもかかわらず、布陣を5バックに変更した。東京Vに決められた決勝弾は後半46分(アディショナルタイム)のPKで、清水のDF高橋祐治の反則を取られたタックルが話題を呼んだ。無謀なチャレンジだったのではないかと言われたものだが、筆者の目には5バックに変えた監督采配のほうがはるかに大きな敗因に映った。

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