J1リーグの過半数が3バック採用 京都サンガの「守備固め」常態化にも違和感
3バックと言えば聞こえはいいが、実際は相手ボールに転じると自動的に5バックになる――後方を大人数で固める守備的なサッカーだ。もちろん世の中に存在する3バックすべてにあてはまる話ではないが、少なくともJリーグや日本代表など、日本のサッカーで例外と呼べる陣形を発見することは簡単ではない。
サッカーの傾向を探る物差しは、縦に速いか、ボールを保持するかなど、ほかにもあるが、もっともわかりやすい基準は、オーソドックスな4バックか守備的な3バックかに大別される布陣の選択だ。
その国のサッカーの特性を探るとき、もっとも手っ取り早いのは守備的な3バックが占める割合を調べることだ。現在のJリーグではどれほどかと言えば、半分以上に及ぶ。サンフレッチェ広島、FC東京、FC町田ゼルビアなど9チームを数える。対してオーソドックスな4バックが川崎フロンターレ、鹿島アントラーズなど8チーム。残りの3チームが併用型である。森保一監督率いる日本代表が守備的3バックに走るのも、ある意味で自然なことなのかもしれない。
しかし、欧州の主要リーグと比較すれば、真反対の関係にある。今季のチャンピオンズリーグや昨年開催されたユーロ2024もしかり。守備的3バックとオーソドックスな4バックの関係は、せいぜい3対7だろう。筆者が見てきた限り、歴史的にも守備的な3バックがシェアで半分を超えたことはない。時代を築いてきたのは非守備的サッカーであるにもかかわらず、日本には攻撃的とは言えないサッカーが蔓延している。
これは100%、監督の意思に基づくものである。選手が監督の指示を無視して布陣を変えることはない。つまり日本には攻撃的な監督が少ない。知っておきたい事実である。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。