東京ヴェルディVS横浜F・マリノス、Jリーグ開幕戦に見た31年の時の流れ だが選手たちは「今」を戦っていた (3ページ目)
もっとも、横浜FMが覇権奪回を目指すには、試合内容は課題のほうが多かった。ふたりのセンターバックの配球が明らかに狙われ、何度も危ない場面になっている。前半は敵陣に押し込めず、攻撃をノッキングさせていた。中盤の編成もうまくいっていなかったし、結局パワーゲームに頼ってしまうのは、昨シーズン後半の失速の余韻をひきずっていた。
横浜FMの"生え抜き選手"でもある水沼宏太は、かつて父である水沼貴史氏がプレーした同じカードの開幕戦のピッチに立てた喜びをかみしめながらも、"今日の試合を次にどう改善するか"しか考えていなかった。
「今日はどうした?」
テレビ解説で来ていた父にもそう声をかけられたと言うが、親子の会話はやはり「今」だった。ノスタルジーに浸っていたら、明日はない。過去も「今」の積み重ねなのだ。
2024年もJリーグが開幕した。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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