遠藤保仁が追求し続けた「サッカーを楽しむ」――その言葉に込められた真実 (4ページ目)

  • 高村美砂●文 text by Takamura Misa

 そうして踏み出したキャリアの先に、彼がどんな未来図を描いているのか、今のところは明らかにされていない。だが、少なからず現役時代と同様に「サッカーを楽しみたい」という思いは持ち続けていると聞く。

 となれば、またふわりとピッチに戻り、指導者としてタクトを振るう姿を想像しないでもないが、今はまだそれを描くのは時期尚早だろう。彼が現役時代に繰り返し語った言葉と照らし合わせても、だ。

「何事も、結果はあとからしかついてこない。だからこそ、自分の足元をしっかり見て、その時々でやるべきだと思ったことをあと回しにせず、コツコツと積み重ねていくだけ」

 ずば抜けた戦術眼や一切の力みなく、的確に繰り返された"止めて・蹴る"の技術、そして柔軟な思考。それらをもとに、優しくて鋭いパスの数々で攻撃を彩り、観ている人たちを楽しませ、自らもサッカーを楽しみ尽くした遠藤保仁の選手キャリアは幕を閉じた。だが、それは再び彼らしくサッカーを楽しむための始まりでもある。

(おわり)

遠藤保仁(えんどう・やすひと)
1980年1月28日生まれ。鹿児島県出身。鹿児島実高卒業後、横浜フリューゲルス入り。同クラブが消滅後、京都パープルサンガを経てガンバ大阪へ。チームの"顔"として数々のタイトル獲得に貢献した。同時に日本代表でも主軸として活躍。2006年、2010年、2014年とW杯に三度出場。国際Aマッチ出場152試合、得点15。2020年10月にジュビロ磐田へ移籍。2023年シーズンを最後に現役から退く。引退後、ガンバのトップチームコーチ就任が発表された。

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