ヴァンフォーレ甲府のACL収支報告 「奇跡」の黒字となったか「国立のチケット販売は想定の4倍」「グッズも予想以上の売り上げ」で... (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【気になっていた収支はどうなった?】

 今回、ヴァンフォーレ甲府が2部リーグのクラブとしてはACL史上初めてベスト16に進出することができた最大の要因は、おそらくそこにあるのだと思う。何かひとつ、誰かひとり、ではなく、すべてが絶妙に絡み合ったからこそ、奇跡は起きた。

 まだ不思議な感じがしていると語っていた植松さんが、「でも」と、少し間をおいてからこんなことを漏らした。

「自分で言うのもなんですが、改めていいクラブだなって。それぞれの立場でお互いを信じ合って、信頼し合っているクラブだなって思えたんですよね」

 自然に出てきたその言葉を聞いた瞬間、あの夜にブリーラムで味わった幸せ以上のものが、胸にこみ上げた。そして、スタッフもわずか20人ほどしかいない地方の小さなクラブが、時々ビッグクラブも驚くような奇跡を起こせる理由が、少しだけわかった気がした。

 選手、監督、スタッフ、そしてそれを後押しするサポーターや支援者が、同じ目標に向かって、それぞれの立場で、それぞれが自分にできることに尽力して、それを最後までやり通した。きっと今回のACLを経験して、人としても、それぞれがひと回り成長できたのではないか。それはクラブにとっても、かけがえのない財産になるはずだ。

 これだけの助けをもらって成功体験を味わったのだから、これからは、困っているクラブに、困っている人に、率先して手を差し伸べられるクラブになってほしい。それが、ヴァンフォーレ甲府が次に目指す目標であってほしい。

 最後に、気になっていたACLの収支について、経理を担当する管理部副部長の横澤康晴さんに聞いてみた。多くの人に助けてもらったのだから、その報告は欠かせない。

「おかげさまで、国立のチケットは当初の想定よりも4倍ほど売れたうえ、グッズも予想を上回る売り上げを記録できました。本当にありがたい話ですし、経理担当として、みなさまには感謝の言葉しかありません。

 まだブリーラム遠征の経費がすべて出てきていないので、正確な数字はわかっておりませんが、当初予測した損失は予想以上に圧縮することができました。

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